賦課金方式の2つの問題点
しかし、ここに加えるべき論点として、FITの費用を電気料金に加算して徴収する現行の賦課金方式の妥当性の検証が挙げられる。賦課金方式には、低所得者ほど負担が重いという逆進性の拡大と、温暖化対策としての逆行という2つの問題があり、費用負担の一般財源化を真剣に検討すべきである。
まず、逆進性の拡大については、近年ドイツや豪州等で、定量的な研究が相次いで公表されている。
例えばドイツでは現行FITを00年から実施した結果、再エネ比率は5%から25%(14年)に拡大した。一方で、家庭の電気料金は14セント(19円)/kWhから29セント(39円)/kWhと倍増しており、欧州で最も電気料金の高い国である。その主要因は賦課金の上昇であり、電気料金支出に占める割合は2割を超えている。
こうした電気料金の急速な上昇を受けて、ラインヴェストファーレン研究所のフロンデル教授らは、家計調査をもとに逆進性が悪化していることを示した。一人当たり可処分所得の中央値の6割に満たない貧しい世帯において、電気料金支出が可処分所得に占める割合を調べると、06年で4.5%だったのが、14年6%、19年に最大7.1%と、他の家計支出を見直さなければならないレベルに上昇する。これに対して可処分所得が中央値の3倍までの豊かな世帯を含むと、06年1.2%、14年1.4%、19年でも1.9%と、前述の貧しい世帯に比べ遙かに小さくなる。
このため、ドイツは「エネルギーヴェンデ(転換)」として、再エネ比率を30年に50%、50年に80%とする目標を掲げるが、逆進性を緩和するために、何らかの形で租税負担を導入することが不可避かつ急務になっている。
このように書くと、電力多消費産業への賦課金減免措置を、家庭等の電気料金に「しわ寄せ」するドイツと、エネルギー特別会計で補填する我が国とで状況が異なるという反論もあろう。
確かに、ドイツの年間減免総額は48億ユーロ(約6800億円)に達し、賦課金のうち減免の「しわ寄せ」分は実に22%に達している。他方、我が国の減免額は今年度456億円、30年においても1200億円程度と推計される。