しかし、我が国でも30年に向けて賦課金自体は上昇が続くため、減免対象拡大の要求が高まることで、家庭等の電気料金への「しわ寄せ」の検討が不可避な状況にある。実際、財務省の財政制度等審議会では、我が国FITの非効率性を批判するとともに、拡大を続ける減免額に警鐘を鳴らしている。
新エネ小委では、単に減免措置の原資を論点とするのではなく、広く現行の賦課金方式そのものの是非を検討するべきである。ドイツでは、11年以降の賦課金急騰時に、「しわ寄せによって賦課金が上昇した」といった、そもそも賦課金自体が莫大になったことを棚に上げた本末転倒な主張がなされた。安易な「しわ寄せ」は、FITの負担と導入のバランスという本質的な問題から目をそらさせ、結果的に分配問題を先鋭化させることを肝に銘じるべきだ。
次に、温暖化対策としての逆行は、電気以外のエネルギー源を利用する場合には賦課金が課されないために発生する。賦課金が本来あった電力価格水準を歪め、非効率的なエネルギーの選択を促すからだ。
一般的に、電力化率(=最終エネルギー需要に占める電力の割合)が高まることは、温暖化対策として優れている。電力の供給側では、原子力・再エネ・高効率火力発電等の低炭素電源を増やす、あるいは高効率化によって、発電部門のCO2原単位が大幅に改善してきたし、需要側においても、ヒートポンプ等の高効率の技術を有するからだ。実際、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書においても、CO2濃度を低く抑えるシナリオほど、電力化率が高くなる傾向にあることが示されている。
現行の賦課金方式は、エネルギー間競争の公平性を歪めるのみならず、温暖化対策として重要な電力化率の向上にも支障をきたしているのである。
長期エネルギー需給見通しを踏まえ、本年6月のサミットにおいて、安倍首相は温室効果ガス排出を30年までに13年比26%削減とする野心的な目標を示した。賦課金の高騰を通じた電気料金上昇によって、結果的に温暖化対策として逆行することがない制度設計が必要になっている。
租税負担への転換を検討すべき
賦課金方式以外にどのような租税負担のあり方があるのだろうか。ドイツや豪州の先行研究では、電気料金の代わりに一般財源による補填、環境関連税制の減免、そして収入・資産が一定水準以下である貧困層への直接給付の3つが挙げられている。