WEDGE REPORT

2015年9月4日

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白髪三千丈の国のメッセージ

 先ず中国。中国は古来、白髪三千丈の国、大げさの大国である。従業員は自分も含めて5人しかいないのに名刺には「総裁」と大書する中国人もいる。8月7日付けロイター・ビジネスは「中国経済の成長率は公式統計の半分以下」と言うロンドンの調査会社ファゾム・コンサルティングのコメントを伝えている。

 中国経済が公式発表の半分以下、と言うことは例えばHSBC銀行が毎月発表する中国のPMI(製造業購買担当者景気指数)を観ても分かる。中国のことは既知のことなのだからすべて投資家の想定内にある。万事想定内にあるから今回、ブラック・スワンが飛んで来たなどと言う人はいなかった。

 投資家にとって最大の敵はアンサートンティー(不確実性)であるが(中国政治はいざ知らず)中国経済がアンサートンティーの根源になることはない。既知のことである中国経済が今回のダウ平均急落の元凶ではない。

 大げさなのは中国だけではない。実を言うとダウ平均も相当大げさである。ダウ平均を構成する30銘柄の株価の合計を分子とすると、その分母となる除数は「0.1497」と極めて小さい。分母が0.1497と小さいから分子となる30銘柄の合計が1ドル上がっただけでダウ平均は7ドル近く上昇する。除数がレバレッジを効かしているから1ドルを7ドルに見せることが出来る。1を7に見せるのはダウ平均のメディア向け高等マーケッティング戦略かも知れない。

FRB、利上げはインフレ次第

 FRBがその威力を発揮したのはポール・ボルカーがFRBの議長であった1979年から1987年の8年間である。ボルカー議長は当時猛威をふるっていたインフレと闘うため金融引き締め政策を断行した。結果、フェデラル・ファンド金利(政策金利)は今では考えられないような高水準の20%に達した。

 ボルカー議長は誰に媚びることなくただただ己の信ずる金融引き締め政策を断行した。この点、conundrum(摩訶不思議)とかirrational exuberance(根拠なき熱狂)などマスコミ好みの単語を並べてマスコミに媚びたグリーンスパンとは大違いである。

 イエレンFRB議長は1980年代のボルカー議長とは真反対の立場からインフレと闘っている。FRBが低金利を維持しているのは消費者物価を上げるためである。FRBは物価上昇率、即ちインフレ率を2%にすることを目標にしている。

 現在、アメリカの物価上昇率(2014年8月~2015年7月までの上昇率)は0.2%とFRBの目標の10%程度である。2014年9月~12月までの月間インフレ率を平均すると月平均1.38%となる。目標の2%になるには2015年1月~8月までの月平均が2.4%でなければならない。石油やガスなどエネルギー価格が下がっている今日、消費者物価を0.2%から目標の2%に上げるのは極めて難しい、利上げまで相当の時間が必要だ。

 今度、2014年9月~2015年8月までの物価上昇率が発表されるのは9月16日の午前8時30分である。そして、翌日の9月17日はFRBの定期会合の日である。9月16日に発表されるインフレ率に注目する必要がある。2010年以降のアメリカのインフレ率を見ると2011年の3.0%をピークに逓減の傾向にある。FRBの利上げのタイミングが物価上昇率2.0%にあるとすれば利上イベントが起きるのはエネルギー価格が急騰しない限りかなり先のことのように思われる。FRBにとって幸いなのは原油価格はここ5日間で10ドルほど上がったことだ。このペースで原油価格が上がればFRBはこの12月に利上げを実施するかも知れない。

  
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