WEDGE REPORT

2015年9月4日

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 アメリカの個人投資家が個別株ではなく株式投信や株式ETFを買うのは個別株特有のビジネス・リスクを避けるためである。株式投信、株式ETFを保有するということは、個別株のリスクを避け市場全体を襲うシステマテックリスクだけをとるということである。

 では、システマテックリスクとは何か。金利やインフレ、為替、原油価格、一国の経済など個人や企業ではコントロールできないファクターがシステマテックリスクである。その点、企業の売上や利益は企業努力でいくらでも改善出来るのでファクターではない。

リーマン・ショックの教訓

 No pains, no gains. 虎穴に入らずんば虎子を得ず。これはリーマン・ショックで得た教訓である。リーマン・ショックは2008年9月15日に投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻したことで始まった。投資家にとってショックだったのはリーマンが破綻したことではなく自分たちの株式投資資産がわずか半年で40%も減ったことだ。ダウ平均はリーマン破綻日の10,917ドルから6ヵ月後の2009年3月9日には6,547ドルに40%も下げた。

 この時期、株式投信を売って安全資産のマネーマーケット投信を買う個人投資家がマスコミの話題になった。マネーマーケット投信を買った個人投資家が再び株式投信に戻ってきたのは今から2年前の2013年ことである。2年前と言えばダウ平均が既に15,000ドル台(リーマン・ショックから半年後につけた6,547ドルの2.3倍)に達した頃である。あつものに懲りてなますを吹くのは結構なことだが吹き過ぎると投資機会を失ってしまうと言うことだ。2013年になって株式市場に再参入した投資家はリーマン・ショック後に始まった上げ相場(ブル・マーケット)に参加する機会を失ったのだ。

 保有する株式資産が40%減っても売らなければ損はでない。イボットソンの資産クラス別長期投資収益率をみると株式資産(S&P 500)は過去20年間で年平均11.2%(債券の平均リターン6.1%の1.84倍)のリターンを出していることが分かる。イボットソンを知っている投資家ならたとえ株式資産が40%減ってもせっかく購入した株式資産を売ることはないのである。

マスコミの犯人捜し

 588ドルの下げで取引が終わった24日、マスコミの犯人捜しが始まった。ダウ平均は21日金曜日の取引で既に530ドルの下げであった。前週末金曜日の下げと週明け月曜日の588ドルの下げは一体何が原因か、メディアの多くは中国とFRB(連邦準備銀行)が株価下落の元凶と見ているようだ。なかにはマーケット・コレクション(株価調整)を挙げるところもあった。筆者はマーケット・コレクション説に同意する。

 ダウ平均は個別の30銘柄から成るポートフォリオである。30の個別銘柄に特有のビジネス・リスクは排除されているのでダウ平均に影響を与えるのはシステマテックリスクだけである。マスコミは中国(の経済失速)や連銀(の9月利上げ)をダウ平均下落の原因として説明しているが果たして本当にに中国と連銀が下落の原因なのだろうか。

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