とかち帯広空港、旭川空港、新千歳空港の3つの玄関口から入った観光客は、時計回りにせよ、その逆にせよ、旭川から帯広の間の「ガーデン街道」を旅するようになる。「ドイツのロマンチック街道は有名ですが、それぞれの町の名前は余り知られていない。そんな街道にできないかと考えたのです」と林さん。帯広、富良野、旭川というそれぞれの観光地が「点」で戦うのではなく、ルートを作って街道化すれば、一気に集客力を高められると考えたのだ。そんな林さんの狙いは見事に当たる。年間約35万人だった旅行者数は60万人に跳ね上がった。
もちろん、各ガーデンが初めからすんなり「街道化」の話に乗った訳ではなかった。富良野は自力で集客できる力があるし、旭川の「上野ファーム」は、ガーデン好きの女性たちにもともと大人気だった。旭川には旭山動物園や大雪山の旭岳もある。帯広と組むメリットがあるのかどうか。
成熟期に入っていた観光地
だが、伝統的な観光地として成熟期に入っていたそれぞれの地域が、自分の力だけで集客し続けていくことに限界を感じ始めていたのも事実だった。いつか人気が衰える時が来るのではないか、そんな不安を感じていたのだ。もちろん、点を線にすることで地域全体が潤うようにしたいという林さんの熱心な説得もあった。
「北海道ガーデン街道」が人気ルートになったことで、それぞれのガーデンの入場者は大きく増えた。「十勝千年の森」は2000年にスタートしてレストランやチーズ工房を手がけたが、年間の来場者は2万人ほどだった。それが街道化で8万人にまで増えた。「組み合わせによって新しいものが生まれる。まさにイノベーションを起こすことができました」と林さんは振り返る。
上野ファームも、個人だけでなくツアー客が増え、年間6万人が訪れるようになった。「点在していたガーデンが線でつながることで、それぞれの違いを知ってもらうことができました。結果として個別ガーデンの新たな魅力に気が付いてもらえるようになりました」と上野砂由紀さんは語る。