一人勝ちのアップル
スマホエコノミーを形成する事業領域は、スマートフォンなどの端末とクラウド、そしてその間を取り持つ通信の3つに分類でき、それぞれが大きく3つのレイヤーを持つ。スマートフォンがコモディティ化しつつあるといわれる中で、唯一、高価格を維持できているiPhoneを提供するアップルの事業領域は図のようになっている。
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アップルは、デザインによってiPhoneの提供価値を最大化している。それは、形状やユーザーインターフェイスといった目に見えるデザインだけではなく、その端末を利用したときにユーザーの内側に生まれて残る体験のデザインを意味している。ユーザーの内側に生まれて残る体験とは、他では得ることのできない「気持ち良さ」や「感動」といった言葉で置き換えても良いだろう。
アップルは、新しい技術を部品として世界中から調達し、それをOSとアプリによってユーザーが体験できる価値に変換する。例えば、iPhone6sの3D Touchと呼ばれる新しい操作方法では、指でディスプレイを押したときに、その圧力の大きさによって指にかすかな振動が返ってくる。この機能は、それぞれ別の部品メーカーの、感圧センサーと振動モーターを組み合わせて実現されている。
さらに、アップルはiCloudというiOSと連携したクラウドサービスを提供している。 iCloudを利用すると、アップルが提供するアプリのデータや写真や音楽のバックアップや、iPhoneやMacなどのアップルの端末間での同期を自動的に行うことができる。
アップルは、OSとアプリそしてクラウドサービスを自社で提供することによって、最大の収益源であるiPhoneに、他にない価値を付加することに成功している。
コモディティ化に巻き込まれるサムスン
それに対し、Android OSを採用するサムスンやソニーは、これまでのように端末のハードウェアだけで差別化することが難しくなってきた。
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Android OSはソースコードが公開されており、それを採用するスマートフォンの(セット)メーカーも独自の機能をOSに組み込むことはできる。しかし、スマートフォンのアプリを開発するサードパーティーにとって、Androidスマートフォンのメーカーごとの異なった機能に依存したアプリを開発することは、コストとリスクを考えるとメリットが少ない。また、別のメーカーの端末に買い換えたときに、同じ(だと思っている)Androidスマートフォンであるにもかかわらず、前の端末で利用していた機能がなくなってしまったり、操作性が異なっていたらユーザーも戸惑うだろう。