2024年11月23日(土)

【特別対談】日本のソフトパワーを考える(全4回)

2009年10月8日

青木 外から見ると、高層ビルがあったりして、他の先進国と同じようにも見える。でも一歩中に入るとやはり違った原理で、人間関係、社会関係が動いています。

日本文化がもつ強みとは?

―― 日本文化全体に看取できる特質というと、ほかにどのようなものが挙げられるでしょうか?

青木  現代の日本文化が世界に受容されている大きな理由の一つに、階級がないことが挙げられます。平等主義的で、誰でも受け入れられるものばかりですから。つまり、文化のほうが相手を選ばない。だから、子どもから老人まで通用するし、あるいは国籍や民族も問わない。それから、宗教的・民族的メッセージが希薄ですから、何語に翻訳されても通用しますよね。なぜ、日本文化にそのような特色があるかといえば、戦後の日本では、都市の中間層が中心になって社会をつくっているからなんです。それを僕は「中間社会」と呼んでいます。ですから、エリート文化ではないんです。庶民のポピュラーな文化が中心。

バラカン そうか、そうか。

青木 ヨーロッパの文化がヨーロッパ以外で受容されている場合は、だいたいは高級文化として受容される。ブランド商品、クラシック音楽、文学などみなそうですよね。

バラカン 60年代以降は変わってきていますが、ヨーロッパでは国家単位で文化を保護する場合、対象となるのはクラシック、オペラといった高級文化になってしまう。日本でもそうかもしれない。でも、ロックンロール以降は、アメリカの影響を受けたヨーロッパのポピュラー文化もみんな庶民的なものなんですけどね。

マクドナルド日本1号店 (銀座三越)

青木 1970年代初めにアメリカのファストフードが日本に入ってきたでしょう。70年の万博のとき初めてケンタッキーフライドチキンが万博会場でオープンして、これが第1号なんですよ。1971年に初めてマクドナルドが入ってきて、日本での最初の店舗は、銀座三越の店内にできたんですね。そのときのマクドナルドの日本における商法は、“高級食品”として売っていた。

 だから、アメリカでは「Fast food」なんだけど、日本では「First food」だったんです。だから三越みたいな高級デパートの一角から売り出した。だけど結局、外でも食べられる手軽な食事、というので、急速にはやりましたけど。

 われわれは当初、アメリカで売っている「Fast food」としてのハンバーガーとは全く違う感じで受け取っていました。同じものを食べるんですけど、そこにある種の文化差があるんです。

バラカン 日本に来た74年頃、「舶来物」という言葉を毎日のように聞きましたよ。「舶来物=高級な」、というニュアンスです。そういえば、当時「舶来物」とセットになっていた言葉に、「外人コンプレックス」があった。これも全く今は聞きませんね。70年代にはみんな日常的に使っていた言葉ですよ。

青木 「舶来物」に対するという意味では同じかもしれないね。輸入したものは高級なものだというのがあった。


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