「加入者管理機能のアンバンドル」とは、SIMの発行機能と、HLR/HSSという、携帯電話番号、端末の所在地、契約状況といった顧客情報を管理するデータベースとの2つを、MVNOに開放することを指している。現在、携帯キャリアがこの部分を開放していないため、MVNOは携帯キャリアのシステムに頼らざるを得ないところがある。MVNOがHLR/HSSを運用可能になると、MVNOが独自のSIMを発行して複数の携帯キャリアのネットワークを利用したり、独自の音声通話割引サービスを提供したりすることなどの自由度が拡大する。
今年の5月29日に、安倍首相を議長とする「第6回産業競争力会議課題別会合」が首相官邸で開催された。そこでの「AI・ビッグデータによる産業・就業構造の変革について」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/kadaibetu/dai6/gijiyoushi.pdf)という議題に関連して、楽天の三木谷浩史会長兼社長が次のような意見を述べた。
〈SIMを開放すると、参入がどんどん進み通信料金が安くなる。それに加えて、単に携帯電話だけではなくて全ての機器がSIMを持つことになっていくと思うが、そのときにSIMの発行を多くの業者ができるようになっていないと、柔軟でクリエイティブなサービスの提供ができないということになる。日本がIT分野、AIやIoTで勝つためには、SIMをいかに開放していくかということがポイントになる〉(〈〉内引用、以下同)
〈これまでにパソコン、携帯電話、 今後は自動車、家電へと、どんどんとグーグルのOSが入って、徐々に支配権をとられていく中で、日本は、最も開放された通信環境ネットワークを提供することでイノベーティブなサービスを生み出す環境を作っていく必要があると思う〉
開放に向けて一歩リードするフランス
三木谷社長が示した資料(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/kadaibetu/dai6/siryou7-1.pdf)によると、フランスでは加入者管理機能を得たMVNOの参入によって、参入前は年率2.9~7.2%の低下であった携帯電話大手4社の平均客単価が、参入後は11.7~12.7%低下するようになったという。すでに日本でもMVNOである日本通信が、2011年と 2014年にNTTドコモに対して、2015年にはソフトバンクに対して、自社のHLR/HSSとの相互接続を申し入れているが進展はないようだ。三木谷社長は、アンバンドルの促進には行政の関与が重要だと述べた。