2022年11月29日(火)

オトナの教養 週末の一冊

2015年11月1日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

米国産業の復活と安全保障への影響

 もちろん、シェール革命のお膝元である米国における変化、とくに石化産業の復活や素材産業への波及、素材需要の拡大、電力・自動車用燃料の転換、国防費削減効果などが具体的に紹介されており、興味深い。

 シェール革命は、化学、鉄鋼といったエネルギー多消費産業を中心に米国経済の競争力を回復させ、米国の成長力はふたたび高まった。米国は原油、LNGの輸入を減らし、貿易収支を改善するとともに、中東依存度を下げることでエネルギー安全保障を高めたのである。

 <シェール革命の追い風は幅広い産業分野に波及し、雇用の改善、設備投資の増加などに結び付き、オバマ大統領が1期目に表明した「グリーン・ニューディール」による経済再生は未完のまま、むしろ「シェール・ニューディール」とも呼ぶべき経済の活況が生まれた。アメリカにとってシェールガスの商業的開発の成功は150年以上前の1860年代のアパラチア山脈における原油発見を想起させるような経済的なインパクトを与える一方、1970年代後半からコンスタントに続いてきたエネルギー対外依存度の上昇傾向を反転させ、国内自給の達成はおろか石油、ガスの輸出国への転換の可能性が出てきている。>

 シェール革命は米国にとって経済の活性化、産業競争力アップという効果だけでなく、中東依存度の低下などを通じて外交や安全保障政策の転換を迫っており、外交戦略の変化はシェール革命の波及と併せ、中東、ロシア、アジアなど国際情勢に影響を与えつつある。この指摘は、日本のエネルギー安全保障や地球環境問題を含む今後の政策展開を見通す上で最大の要素となろう。

※筆者の最新作『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)が、11月10日発売。

 

 

 

 

  
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