2024年11月23日(土)

WEDGE REPORT

2015年11月2日

元大使を拉致とサウジを非難

 イランが30日、17カ国の外相が出席したシリア和平協議(ウイーン)に初めて招請されたのは米欧やアラブ諸国もこうした認識を深めたからに他ならない。しかし一方では、イランのシーア派革命輸出を警戒するサウジアラビアなどペルシャ湾岸諸国はイランの介入拡大に強く反発している。

 特にサウジはイランが米国などとの核合意により、経済制裁が解除され、海外で凍結されていた1000億ドル(約12兆円)が返還されることを恐れている。イランがこの“臨時のボーナス”で、アサド政権支援の強化をさらに強めるなど影響力を拡大すると見ているからだ。

 イランの対外関係を牛耳るソレイマニ将軍の戦略は、シーア派の盟主イランの影響下にあるイラク、シリア、レバノンという3カ国のシーア派支配体制を維持、イランから地中海に至る「シーア派三日月ベルト」を死守することだ。このために、シーア派の一派であるアラウイ派が基盤のアサド政権を失うわけにはいかない、ということだ。

 しかし、アサド政権の追放を求めて反体制派を支援するスンニ派の守護者サウジにとってはこのシーア派ベルトは自分たちへの挑戦、シーア派革命を拡大するための枢軸と映る。とりわけ核合意でイランと急接近する米国がイランを今回の和平協議に入れたことも面白くない。

 このサウジとイランの両国は9月24日にサウジの聖地メッカで起きた巡礼者圧死事故でも非難の応酬を激化させている。AP通信によると、この事故の死者は史上最悪の2177人。うちイラン人は400人ほどが死亡か行方不明となったままだ。特に不明者の中に元レバノン大使が含まれており、イランはサウジが事故を口実に元大使を拉致した、と非難している。

 和平協議は2週間以内に再開されることになったが、イランとサウジの外相が今回の協議の場でも激論を展開したとされており、両国の対立で協議そのものが空中分解しかねない、と早くも暗雲が漂っている。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。
 


新着記事

»もっと見る