2024年4月26日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年11月10日

 こうしたなかで最も驚かされたのは、中国のメディアが自ら南シナ海の人工島に「領海は存在しない」という論を展開してみせたことだ。

 伝えたのは『鳳凰ネット』であるが、引用しているのは中国の国際法及び国際海洋法の権威である劉楠来教授のコメントだ。 

中国の海洋法権威も合法と主張

 劉教授の見解は、記者がまず「アメリカのメディアでは中国の人工島には12カイリの領海を設定することはできない。500メートルの安全区が設定できるだけだとの主張があるが?」との問いかけに答える形で示されている。

劉教授 「満潮時に水没してしまうような岩礁に人工的に島を造ったとしても、そこに領海を設定することはできない。ただ、中国が南シナ海で手を加えているものには領海が設定できるものもある」

記者 「では、今回米軍艦が通過したところはどうでしょうか」

劉教授 「手元の資料を見る限り、あの2つの岩礁に中国の領海は設定できていない」

記者 「では、今回の米軍艦の侵入は問題がなかった?」

劉教授 「何も問題はない。合法的な行為だ」

 社会科学院の研究員である劉教授の見解は、当然のこと「商業化のために『人民日報』でかけないことを書く」ために創刊された『環球時報』の論調よりはるかに権威があるものであることは言うまでもない。

 中国国内でいま、こんな議論ができてしまうことこそ、中国から見た南シナ海問題の実相なのだ。

  
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