WEDGE REPORT

2015年11月26日

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木村正人 (きむら・まさと)

国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト。元産経新聞ロンドン支局長。米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員、慶應義塾大学法科大学院非常勤講師などを歴任し、2012年独立。近書に『欧州絶望の現場を歩く』(ウェッジ)。
 

 人権問題や香港の民主化問題を棚上げした「英中の蜜月」に異を唱えたのは少数派だ。チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は「すべてはカネだ」と吐き捨て、ダライ・ラマ14世と親交があるチャールズ皇太子は晩餐会を欠席した。クセのある下院議長ジョン・バーコウは習の議会演説を前に、ミャンマーのアウン・サン・スー・チーの名を出し、「自由という本質的な人権の国際的な象徴だ」と持ち上げた。人権派弁護士や活動家らを不当に拘束する中国への当てこすりだ。

チベット弾圧に対する抗議活動の印象は薄かった (画像:MASATO KIMURA)

 英BBCの女性政治部長ローラ・カッセンバーグが記者会見で「習主席。民主的でなく、透明性もない、人権に対して深く、深く問題を抱える国とビジネスをすることをどうして英国民が喜ばないといけないとお考えでしょうか」と質問するのが精一杯だった。

 一方、晩餐会に招かれたコメディアンのスチュアート・リーは英紙ガーディアン電子版に「仰々しい超大国へのロイヤル・キス」と題して寄稿し、「エリザベス女王も中国の巨大な尻を舐めた。最大野党・労働党党首ジェレミー・コービンも、だ。尻舐めと尻へのキスが行われた」と怒りをぶちまけた。

 10年5月に保守党と自由民主党が連立を組んだキャメロン政権が誕生した際、在英日本大使館の関係者は「労働党の首相ゴードン・ブラウンは完全に日本飛ばしだった。新政権には日本通の外相ウィリアム・ヘイグがいる」と喜んだ。オズボーンの岳父で元運輸相のデービッド・ハウエルも知日派であったことから、キャメロン政権の両腕は「日本ビイキ」という楽観論が広がった。実際、日英の防衛協力は進んだ。しかし、甘い期待は裏切られた。

 オズボーンは、当時、野党だった保守党党首マイケル・ハワードが辞任を決めた際、真っ先に党首選への立候補を促した人物だ。それほど才知にたけていた。34歳のオズボーンはしかし、兄貴分のキャメロンに立候補を促した。党大会でキャメロンのすぐそばに座ったことがあるが、オズボーンに送る眼差しは息子を見つめるような愛情に満ちていた。

 今年9月、5日間にわたって北京、上海、新疆ウイグル自治区のウルムチ、四川省成都を訪問したオズボーンは国賓待遇を受けた。オズボーンに率いられた経済使節団の車列17台のため道路は完全に通行止めにされた。労働党新党首に急進左派のコービンが選ばれたため、5年後の総選挙では保守党が勝ち、オズボーンが首相になる可能性が高い。習体制が23年まで続き、キャメロンからオズボーンにバトンが引き渡されると少なくとも25年までは英中「黄金時代」が続く。

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