発電量に見合わぬ巨額コスト
今回のサンディエゴの発表に対し、米最大の環境保護団体であるシエラクラブは「達成できれば年間に700万トンの地球温室効果ガスを削減できることになる」と高く評価。カリフォルニア州全体では2050年までに地球温室効果ガスの8割削減を目標に掲げているが、それに大きく貢献することになるだろう、としている。
しかし、壮大な目標を掲げるのと実現することの間には大きなギャップがある。最大の問題はコストだ。市が電力グリッドのコントロールを行い、電力源をソーラーと風力にする、というのは聞こえは良いが相当のコストがかかる。なぜ全米で再生可能エネルギーがもっと採用されないのかといえば、電力に対する生産コストに大きな開きがあるためだ。
米エネルギー情報センター(民間団体)による試算では、1MWの電力を生み出すためのコストでもっとも安いのは地熱発電で47.8ドル、次が従来型の天然ガス燃焼で72.6ドル、石炭燃焼が95.1ドルとなっている。風力は陸上型では73.6ドルと安いが、海上型では196.9ドル。太陽光発電は125.3ドル、太陽熱は239.7ドルと割高だ。
もし市が使用電力をすべて風力とソーラーにした場合、電力コストが大幅に上がる可能性があるが、例えば市民の家庭電力にもその影響が及ぶのか。その場合市はいくばくかの補助金を支給するのか。また市全体がオール電化に移行できるわけもなく、ある程度はガスもエネルギー源となるが、それをメタンガスの再利用だけで賄えるのか。
数々の課題はあるが、サンディエゴの目標は使用エネルギーを100%再生可能のものとすること、2035年の市全体の地球温室効果ガス排出量を2010年レベルの半分にすることだ。この壮大な目標が達成できるかどうかは不明だが、すでに全米13の都市がこれに追随して同様の目標を掲げ始めた。今回の決意表明、決して無駄なことではない。
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