シリア和平協議困難に
今回の事件で懸念されるのは、昨年12月に国連安保理で決議されたシリア和平協議の行方だ。決議では1月をめどに国連の仲介で、アサド政権と反体制派の直接協議を開始することになっている。しかしアサド政権を支えるイランと、反体制派を支援するサウジの関係が決定的に悪化したことで協議開始は困難になったとの見方が強い。
サウジは12月、反体制派の主要組織を集めて会議を開催、半年以内の発足とされたシリアの移行政権にアサド大統領の参加を認めないことで一致した。これに対してアサド大統領は交渉の条件として反体制派の武装解除を要求し、協議のスタートが危ぶまれていた。
シーア派政権の存続を最重要視するイランもサウジの反体制派固めとアサド氏排除の決定に強く反発していたが、サウジとの関係がさらに悪化したことから和平協議で妥協する余地はなくなったと見ていい。それどころか、中東全域でスンニ派とシーア派の宗派対立が拡大する懸念すらある。イラクのアバディ首相は「シーア派に対する抑圧は続かない」とサウジへの反発を強めている。
こうした事態にオバマ政権は水面下でイランとサウジの緊張がこれ以上高まらないよう鎮静化を図っているが、当面は打つ手がない状態。過激派組織「イスラム国」との戦いに結束を図らなければならない時に起きた両国の対立激化に頭を抱えている。
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