世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年1月15日

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中国が曖昧戦略を採る理由

 中国の曖昧戦略の問題点を突く論評です。経済利益のために対中関係を強める欧州において、中国の動きを批判的に観察、分析している学者がいることは良いことです。

 国際政治、軍事政策の中で曖昧政策は一つの重要な手段となりますが、それは必然的に誤算などのリスクを生み出すことにもなります。それを防ぐためには、戦略対話や、時に応じて相手国の出方を試すことも必要になります。筆者が、中国が南シナ海についての法的考えを曖昧にしたまま、武力の行使も厭わないとしていることは非常に危険だとするのは、理解できる議論です。中国が意図的に法的議論の曖昧化に転じているとの分析は10月頃から言われています。

 何故中国は法的説明を曖昧にしようとしているのか、敢えて推測すれば、第一に、九段線(国際法上受け入れられるものではない)や今まで中国が採ってきた措置、海洋法の規定などを理路整然と中国に有利なように説明するのは難しいことが分かってきたのではないでしょうか。法的議論は極めて複雑であり中国はそれに勝てないことが分かってきた可能性があります。第二に、法律論は曖昧にして問題を政治問題にしておくほうが有利だと判断したのではないかとも思われます。政治問題であれば勝ち負けははっきりしないですし、二国間の外交交渉に持ち込むこともできます。第三に、時間を稼ぐことが出来れば南シナ海で既成事実を固めることも出来ると判断した可能性があります。

 「東南アジア諸国は経済で中国の影響力を受け入れ、防衛では対米関係強化を図っている(ヘッジ政策)」との筆者の説明は的を射ています。しかし、その間に中国の影響力は忍び寄っており、中国の主張が既成事実化していくことに注意しなければなりません。

 南シナ海の問題についてのオバマ政権の認識は当初甘いものだったと言わざるを得ません。しかし、関係国の働きかけや9月の米中首脳会談の不調によりオバマがラッセン派遣を決断したのは意味があります。ただ、航行の自由作戦は継続することが宣言されていますが、やはりオバマ政権が積極的であるようには見えません。

 関係国は引き続き協力を強めコアリッション(連合)を維持していくことが重要です。11月の東アジア首脳会議で各国首脳がこの問題につき発言し、大きな議論になり共同声明にも反映されたことは成功でした。日本も良い役割を果たしたと言われています。中国にも一定のインパクトを与えたものと思われます。

  
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