第一に挙げるのが体にフィットしていることだ。たとえばシャツをズボンの上に出して着るような着方は避けるように指導する。体にフィットしない服装は、服が何かにひっかかって動きを阻害されることがあるし、それが原因で怪我につながる危険性もあるからだ。
そして、風の谷幼稚園では5分丈のズボンを推奨している。普通の丈や7分丈では、ズボンがヒザにひっかかって動きにくい。また、短すぎる半ズボンでは、野山の散策など屋外活動で肌の保護などの面で支障が出る。動きを阻害せず、ハイソックスと組み合わせれば、どんな状況にでも対応できる5分丈が一番活動的な服装というわけだ。
また、普通の丈や7分丈の場合、ヒザにひっかかってズボンのウエスト位置が下がりやすい。この結果、シャツがズボンから出てしまいやすくなる。これはフィット感という観点からも問題があるし、その状態に慣れて「だらしない格好」が普通になってしまうことをも懸念しているのである。
衣服の指導を通じて
“感覚”を育てることが大切
「衣服の自立」は、「子どもたちの成長を促す動きやすい服装」をさせることだけが目的ではない。これは「当たり前のこと」であり、教育的観点から大切にしているのは、「子どもたちの感覚を育てる」ということだ。具体的には「暑い・寒い」「気持ちいい・気持ち悪い」を肌で感じられるようになること。これによって、子どもたちに「異常を察知できる力」を身につけさせていきたいという。
「これは服装に限ったことではありませんが、子どもたちに“気持ちいい”状態とはどんな状態かを体感させることが大切です。たとえば、風の谷幼稚園の教室はいつもピカピカにしてあります。5歳児の子どもたちには掃除をさせますが、子どもたちが帰った後に、先生たちがさらに念いりに掃除を行います。それは、『きれいな状態』の基準を示し、『汚い状態』を肌で分からせるためです。
『きれいな状態』にいれば、『汚い状態』を“気持ち悪い”と言う感覚で感知できるようになります。子どもの中にその基準をつくることが大事なのです」(天野園長)
そして、子どもの髪が額や首筋にいつもかかっている状態や、洋服の袖が長すぎて手の平や甲を覆ってしまうような状態については、特に注意をしているという。これが基準の状態となってしまうと、子どもたちの感覚の成長に悪影響が出ると考えるからだ。
具体的には、髪がいつも額や首筋にかかっている状態だと触覚が鈍くなり、汗が流れてもそれを“気持ち悪い”と感じなくなる。また、砂場遊びや水に触るときに多くの子どもは無意識に「腕まくり」をするが、いつも袖口が手のひらを覆っている服を着ている子どもは、そのまま手をつっこんで遊び、汚れていることを気にしない子どもになる。過去の経験的にこのように育つことが多いという。