そして印象深いことを付け加えた。
「2020年の東京オリンピック・パラリンピックは教育界にとってもチャンスなんです。何がチャンスかといえば、特別支援学校の生徒たちは、社会からは可哀そうな人たち、弱い人たちと見られがちです。ですが特別支援学校として、どのように社会貢献ができるか? と考える時代に変わってきていると思うのです。いままでは保護される人たちという受け身でしたが、これからは社会貢献をする立場に変わってきていると思っています。
2020年のオリンピック・パラリンピックが決まってからは、このインクルーシブ教育システム構築の動きが盛り上がってきて、これからいろいろな試みがなされるはずです。地域の人たちとも、様々な形で関わり合いながら行うことも増えてくることでしょう。この国が東京オリンピック・パラリンピックを得たことはスポーツ界に限らず、教育界にとっても大きな前進となり、子どもに限らず日本全体の意識を変えられるチャンスだと考えています」
中戸川氏は一連の授業で得た確信から、多様性を認め合う共生社会を目指して、「学校発の社会変革」を教育界から社会に向けて仕掛けたいと語っている。
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昨年この『障害者アスリート~越えてきた壁の数だけ強くなれた』で「健常者も車椅子ラグビーを一緒に楽しむ。スポーツから考えるダイバーシティとは」と題して、同じ横浜市に活動拠点を置くウィルチェアーラグビーチーム「横濱義塾」と女子ラグビーチーム「YOKOHAMA TKM」のダイバーシティ推進活動をご紹介したことがある。
活動の目的を両チームのプレスリリースから一部抜粋すると、
―スポーツを通して障害者への理解を深め、心のバリアフリーの促進を図ると同時に、多様な個性を受け入れ、「違い」を尊重し、「違い」に価値を見いだせる人づくり、地域づくり、社会づくりを目指したダイバーシティ推進活動のパートナーシップを結ぶ運びとなりました。―
とあり、相互理解を深め共に活動を伝え合うことからスタートすると書かれている。こうした両チームの考えや取り組みは、今回ご紹介したインクルーシブ教育の試みや中戸川氏の教育理念とも合致しそうだ。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックはこの国に何をもたらすだろうか。世界の大イベントを商業主義に偏り過ぎることなく、勝利や記録、競技の普及のみに留まることなく、この国全体が大きな成長を遂げられるようなキッカケになってほしいと願っている。
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