目指すは「共生社会」
文部科学省が推進するインクルーシブ教育システムの構築が目指すものは「共生社会」の形成である。
文部科学省のHPから一部引用すれば、
―「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障がい者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。それは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である。―
と書かれ、このような社会を目指すことは、我が国において最も積極的に取り組むべき重要な課題だと記されている。
附属特別支援学校では、ウィルチェアーラグビーの体験授業のほか、10月には元オリンピック選手を招いたバレーボール教室や11月にブラインドサッカー(全盲の選手によるサッカー)が行われた。
附属特別支援学校の副校長であり、同校でインクルーシブ教育を推し進める中戸川伸一氏は、「インクルーシブとは包み込むという意味ですが、インクルーシブ教育とは、障がいがあってもなくても出来る限り同じ環境の中で学びましょうというものです。私たちが目指す共生社会作りには、お互いを知り多様性を認め合うことがもっとも重要です」
バレーボール教室の時は近隣の中学校の生徒なども招き約200人が参加した。一連のインクルーシブ教育の最初の試みだっただけに、職員たちはできるのかどうか、半信半疑だったという。
「『案ずるより産むが易し』でした。障がいがあってもなくても関係なく、みんながバレーボールを楽しみました。誰もが勝ちたいと思って頑張るんですよ。今日のウィルチェアーラグビーは、どちらの生徒も見るのも初めて、車椅子に乗ることも初めてだったはずです。
車椅子のタックルには一斉に驚きの声が上がりますし、得点が入れば湧きます。選手や仲間が頑張っている姿を見れば自然に声援が飛びます。それは障がいのあるなしに関わらず、みんなが一つになれることや、感動を共有できることを意味しています。それがスポーツの持っている力だと感じました。
これからの社会を担っていく人たちですから、こうした年代に障がい者といっしょにスポーツを楽しむという経験はとても大事なことだと思います」
バレーボール、ブラインドサッカー、ウィルチェアーラグビーを通して確信したことは、お互いを知る機会を教育の場で積極的に作ることであり、心のバリアフリーを図るにはスポーツがもっとも適しているのではないか、と中戸川氏は言う。