WEDGE REPORT

2016年2月29日

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倉都康行 (くらつ・やすゆき)

RPテック代表取締役・ 国際資本システム研究所長

1979年東京大学経済学部卒。東京銀行、バンカース・トラストを経て、チェース・マンハッタン銀行。2001年に金融シンクタンクのRPテック株式会社を設立。近著に『危機の資本システム』(岩波書店)。
 

最大の懸念材料はドル高

 最大の懸念材料はドル高である。イエレン議長らは為替レートの米国経済への影響は限定的と判断しているようだが、決算発表で明らかなように米国主要企業の業績はドル高の逆風で低迷を余儀なくされている。昨年11月に公表された連銀スタッフの分析に拠れば、ドルが20%上昇すれば約1年後に米国の成長率は1.5%押し下げられ、3年後にはその縮小幅が3%にまで拡大する、という。

 主要通貨に対するドル・インデックスは2014年7月の80台から2015年3月に100台へと約25%上昇しており、現在でも95台で20%高の水準に止まっている。その分析に照らし合わせれば、米国の成長率は既に1.5%以上押し下げられている計算だ。ちなみにゴールドマンは、現在のドル高は2.5%の利上げに等しい効果を持つと試算しており、昨年FRBの利上げはさらに追い討ちを掛けるような上乗せになった、と見ている。

 また個人消費がガソリン安に反応していなことも特筆されよう。米国家計はガソリン安の恩恵を他の消費に充てるのが従来のパターンであったが、昨年来の可処分所得の増加は貯蓄に回っているのが現状だ。これは、消費者が将来の所得減少リスクを敏感に感じ取っていることを示している。

 米国コンファレンス・ボードが発表した2月の消費者信頼感指数は前月比5.6ポイント低下して2015年7月以来の低水準に落ち込んだのは、年初来の市場動揺で景況感が悪化したことが主因だが、その消費節約傾向は現実問題としてGDPに影響し始めるだろう。心理面の冷え込みだけでなく、財・サービスへの支出縮小が始まる可能性は高い。

 他にも設備投資の不振、製造業景況感の悪化など良くない数字が並んでいるが、総じて一時的な停滞で終わる可能性もある。FRBは恐らくそうした判断をしている筈だ。だが中国に代表される新興国経済の状況や日欧経済の停滞などを考えれば、米国といえども独り勝ちがいつまでも続く状況にはないかもしれない。

 ブルームバーグに拠れば、主要中銀による過去10年間の経済見通しにおいて、最も楽観的であったのがFRBであった、という。仮に年後半にでも景気後退のムードが出て来れば、さすがにFRBも方針を大転換せざるを得ないだろう。市場に「米国も日欧に続いてマイナス金利か」といった観測が浮上してくる可能性も、全く無いとは言えまい。

  
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