2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年3月9日

 サウジ・イランの対立については、シリアやイエメンでの代理戦争、石油産出量、各地での宗派対立が、注目を引いていますが、石油以外の経済的側面への注意をこの論説は喚起しています。新しい視点の提起は常に有益なことです。

 筆者は、サウジはイランとの外交・軍事面での競争では弱く、経済面での競争ではイランによりよく対抗しうる、と指摘し、強みである経済面での競争に注力することを考えたらどうかということを示唆しています。

 外交・軍事面での競争より、経済面の競争は平和的であり、そうなれば歓迎できます。

政策転換できぬサウジのジレンマ

 しかし、サウジとしては、シリアの反政府「イスラム軍」への支援をやめて切り捨てるわけにもいきませんし、イエメンでイランの支援を受けたホーシー派の政権が確立することを許すわけにもいきません。サウジの政治・軍事面でのこれまでの政策は、そう簡単に転換できないでしょう。

 イランの物流拠点にUAEの港湾がなること、カタールがイランのガス開発を助けること、ドバイなどの銀行がイランに融資をすることなどは、起こりそうなことです。しかし、サウジの湾岸諸国への影響力はこういうことがあっても健在であるように思われます。サウジ・イラン対立は、シーア派・スンニ派の宗派対立であるとともに、ペルシャとアラブという民族対立でもあり、アラブ民族としての連帯心はそれなりに強固です。

 サウジは石油産出国として大きな利得を得て、国内の安定のためにそれを原資として国民にバラマキをしてきた国ですが、石油価格下落のなかで、サウジの国家運営は難しくなります。国外に敵を作って国内をまとめるよりも、国内問題にきちんと取り組むのが正しい方向でしょう。

 イランの世界経済への再登場は、各国の企業にとって大きなビジネスチャンスになります。日本企業もそのチャンスを逃さないようにすることが望ましいと言えます。

  
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