INSSの会議では、中東ではゲームのルールが変わりつつあるということが言われた。国家は分裂し、自称カリフ国はシリアとイラクに深く根を張り、世界中の多くの国にプレゼンスを拡大、今もって革命的なイランはアラブの殆ど全ての国を不安定化すべく代理戦争をやっている。ムバラク、アサド、カダフィの世俗王朝に体現される旧秩序は粉砕されている。
イスラエル人は、中東では国家システムが壊れ、それは長年続きそうであると考えており、どのように戦争をするのか、注意深く考えなければならないとしている。
出典:David Ignatius,‘Why is Israel so cautious on the Islamic State?’(Washington Post, January 26, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/in-the-middle-east-a-serious-game-of-war/2016/01/26/30c3cfac-c466-11e5-a4aa-f25866ba0dc6_story.html
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イスラエルの対IS戦参戦はあり得るのか
この論説はイスラエルの考え方を適切に説明しています。もともとイスラエルはアサド政権が倒れることを歓迎していたわけではありません。よく知っている悪魔の方が混乱の中から生まれてくるよくわからない悪魔よりましだと考えていたフシがあります。
しかし、シリア内戦が今の状況になった中で、アサドの方がましということは言えないし、言っても仕方がないと考えています。ISとの戦いにイスラエルが今乗り出していく気はありません。ロシア、アサド、米国などがISと戦っており、その帰趨を見守っている方が現段階では適切と考えていると思われます。
しかし、状況は極めて流動的であり、状況に応じてイスラエルも対応せざるをえなくなる可能性があります。シリア南部のダアラ地域には「ヤルムーク殉教者旅団」があり、これはISに忠誠を誓っています。イスラエル南部はシナイ半島に接していますが、そこにはISの「シナイ地方」を名乗っているグループがあります。その上、ISがパレスチナやイスラエルのアラブ市民にシンパを獲得する可能性があります。イスラエルはISとの戦いやシリア内戦に巻き込まれることを極力避けようとするでしょうが、そうはいかない状況もありうるでしょう。
「イスラエルが総攻撃すれば、南部シリアやシナイ半島のISを数時間で駆逐しうる、しかしそのあとが心配だ」とイスラエル軍高官が述べたのは、大きな示唆を与えています。今のイスラム国を掃討するのには、何十年もかかるなどと言うのは間違っています。西側の能力よりやる気の問題が大きいと言えます。
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