2024年12月28日(土)

特別企画 海外はオバマ訪日をどう見ているか

2009年11月19日

約1週間のアジア訪問を終え、オバマ大統領が帰米した。
アメリカは、そしてアジア各国は、いったいどのような対話と成果を得たのだろうか?
現代アメリカ政治についての著作も多い久保文明・東大教授にオバマ大統領のアジア訪問と、今後の日米、日中関係についてお話を聞いた。

編集部(以下「――」) このほど、オバマ大統領がアジアを訪れました。日本が半日ほど、一方中国はほぼ4日間。長く滞在するということは、問題が山積していることの表れでしょうか。

 はい。長く滞在するからアメリカにとって親しいとは、言うことはできないと思います。ヨーロッパの場合でも、イギリス、フランス、ドイツといったNATOの主要国には、長くいることがありません。アメリカと中国の距離は、まだかなり遠いものですから、オバマ大統領も、それだけ多くの要人らに会う必要があるでしょう。それに日本と中国では、抱えている問題の質がずいぶん異なります。

 日本とアメリカとの間には、いま普天間問題などはありますが、日米同盟は相変わらず堅固であり、簡単には関係は壊れないでしょう。基本的には、お互いの関係に対する価値観もコンセンサスがとれている。そこへ行くと、アメリカから見た中国というのは、アメリカにとって大きな問題を抱えた国であることは確かです。たとえば、軍事力の強化。アメリカと中国が将来、軍事的衝突をする可能性だってある。人権問題、チベット・ウィグル、知的所有権、かつては対日間の問題であった通商摩擦も、いまや対中関係においてでしょう。

――日米関係において、60年代の安保、80年代の通商摩擦ほど大きな問題はいまやない。

 そうですね。もちろん、普天間問題を早く決着させたほうがよいことは確かです。オバマ大統領との首脳対談の翌日、鳩山首相は「現状案を前提にしたわけではない」「年内に答えを出すといったわけではない」と、対談での合意をひっくり返すような発言をした。今年9月、政権交代から1週間でオバマ大統領と対談を果たした鳩山首相は、「信頼関係を築くことができた」とアピールしましたが、今回のようなことを繰り返しているとアメリカ側も不信感を抱く。具体的な行動によって裏づけされないと、首脳同士の個人的な信頼関係も共有できないし、政権同士の協力関係に躓きも出てくるでしょう。

失われた機会

――普天間問題で露見したように、鳩山政権は外交において軸足が乱れています。

鳩山内閣は基本路線を示すというレベルでも、メッセージがわかりにくい。日米関係を深化させたいと言うものの、かつて北京で「これまでの対米政策はアメリカに依存しすぎていた」と発言したり、「今後は日米関係には、平等を求める」と言ったり。それから一時は、「東アジア共同体からアメリカを除外する」という旨の発言もありました。だから、政権全体が示す方向性が、アメリカを重要な同盟国と考えているのではなく、批判的に見えてしまうんです。アメリカは、そういう政権のブレに対しては不安を持っているでしょう。


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