それはともかく、9・11によって示されたアメリカが攻撃されたという事実は衝撃的でした。日本人は、条約上の義務がないにしても、同盟国として何をすべきなのかを考えなくてはならなかった。それまで日本人があまり意識してこなかった部分に、気づかされた出来事でした。
ただ、ここには集団的自衛権の問題が大きく関わってきます。頭の整理として例を挙げると、たとえば日本に飛んでくるミサイルは日本自身が撃墜してよいけれど、アメリカに飛んでいくミサイルを打ち落とす同盟条約上の義務もないし、憲法上でも許されないわけです。そういう意味では、二つの政府の関係が、対等なものとは言いがたいわけです。
鳩山政権は損をしている
――そのような非対称な関係においても、アメリカからの日本に対する信頼度は高いのでしょうか?
アメリカのなかでは、中国と違って対日政策というのは、ある程度コンセンサスがあります。読売新聞社が毎年日米間の相互信頼度を調査しているのですが、アメリカ側からの信頼度は、これまでずいぶん高いレベルでした。しかし、専門家の間では、鳩山政権に代わってから、信頼度も落ちるだろうと言われています。
――日本側が、わざわざ関係に揺らぎをもたらしている、と。
そうですね。もったいないことだと思います。普天間問題にしても、与党になるということは、沖縄県の要望に応えることのほかに日本全体の要望にも応える必要があるということです。県外移転と言って具体的な候補地を出すわけでもない。具体的な県があったとしても、地元の反発はやはり免れないでしょう。
――普天間問題は、長い歴史のなかでアメリカと沖縄県と名護市、三つの思惑が一緒になったタイミングだったのに、永田町だけがそっぽを向いた。
たとえ民主党が普天間問題に関するマニフェストを撤回したとしても、一時的に批判は浴びるでしょうが、内政で挽回すればいいでしょう。野党時代に県外候補の調査をきちんと行っているのなら別ですが、ちょっとそのあたりが不十分という印象は否めない。日米関係は、そもそも合意した形に向けて、早めの軌道修正が必要だと思います。
――自民党がやっていたことをひっくり返すことに意義があるのではないということですね。そこにはメディア側の問題もあり、政権交代後、民主党と自民党は何が違う(変わった)のかを書くことが目的になっている。そして国民が“自民党と違う”ことが価値であるように感じてしまう、ということが起きています。とくに外交安全保障については、前政権と同じ路線を選ぶことは、まったくマイナスにはならないはずなのに。
そうですね。それにアメリカのように超党派外交があったっていい。ただ、日本には長く自民党政権が続いてきて、本格的な政権交代の経験がありませんでしたから、全体が学習していかなくてはならない面ではあると思います。
中国の台頭と、アメリカの思惑
――オバマ大統領の対中政策についてはいかがでしょうか。オバマ大統領は、今回の訪中で発言があったように、米中の協力関係をつくるという姿勢です。中国に厳しい共和党系からの批判は織り込み済みということでしょうか。