ISでないことに一筋の光明
今回、安田さんを拘束しているのが、後藤さんらが人質に取られたISではなく「ヌスラ戦線」であることにまだ希望がある。「ヌスラ戦線」はレバノン人らを誘拐するなどしているが、ISのように人質を無残に殺害するようなことはこれまで伝えられていない。ここに一筋の光明がある。
「ヌスラ戦線」とはどんな組織なのか。2012年に設立されたアルカイダのシリア分派組織だ。当初はISの関連組織という位置付けだったが、ISが吸収しようとしたことから対立。アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリが2014年、ISを破門したのを機会にISとは完全に袂を分かち、それ以降、両組織は抗争状態にある。
現在の指導者はファテフ・ムハンマド・ゴラニ。勢力は6000人から1万人。シリア内戦では、アサド政権と敵対する反体制派の連合組織「アラブ遠征軍」の一翼として加わり、昨年から続く北部アレッポの激戦では、反体制勢力の最強の組織として力を発揮した。内戦に軍事介入したロシア軍の標的の1つとなってきた。
しかし「ヌスラ戦線」は米国に対して憎悪を燃やしており、米国肝いりのシリア人部隊がシリアに投入された昨年の9月、同部隊を攻撃して壊滅状態に追い込んだ。この攻撃もあって米国の5億ドルもつぎ込んだシリア人部隊創設計画は破綻することになった。
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