2024年7月14日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2009年11月25日

 中国の現体制下では、新聞社はそれに従う以外にない。件のインタビュー記事は、ようやく検閲をパスして19日の新聞紙面で掲載されたが、字数が大幅に圧縮されたうえ、その内容はもはや、オバマ大統領があらゆる公の場面で発言したものの単なる繰り返し以外の何ものでもなかった。こうして、『南方週末』が単独で聞き出した、オバマ大統領が発言したであろう「面白い話」の部分は全て削除され、闇の中に葬られたのである。

共産党宣伝部の横暴に対する『南方週末』の反乱

 そして、共産党宣伝部の横暴に対する自分たちの不満を表明するために、『南方週末』はわざと、圧縮される前のインタビュー記事を掲載するための紙面のスペースを空けたままにして、当日の新聞の発行に踏み切ったのである。編集部はさらに、この空けた新聞紙面のスペースに、「この空白を読めば、中国が分かってくる」との大文字の一文を掲載することで、今回、どのようなことが起きたのかを読者に暗示した。

 それは、中国共産党の言論統制にあえぐ一新聞社からの、暴政に対する精いっぱいの抵抗と抗議だった。

 以上が、オバマ大統領の訪中にまつわる中国政府の「言論統制」の一部始終である。今回のオバマ大統領の訪中において、中国は「世界の大国」として輝かしいイメージを世界中に顕示したようだ。

 しかしながら、国民から言論の自由を奪い取り、人権や自由に関するオバマ大統領の発言が国民に伝わることを極度に恐れているこの国を、果たして「世界の大国」と言えるだろうか。国賓のオバマ大統領のメンツを潰してでもその発言を封じ込める暴挙に出た中国――。その姿から浮かび上がってくることは、「超大国」のイメージとは裏腹に、オバマ大統領の発言の一つひとつが国内の「安定」を脅かすことが心配なほど、中国の体制は実に脆いということである。

 そして、『南方週末』という一新聞社が、紙面を空白にしてまで新聞を発行するという強硬手段で中国共産党の言論統制に公然と抗議してくることもまた、体制がますます脆弱化してきていることの証左であろう。

 「圧政が必ず反抗を呼び、反抗はいずれか圧政をひっくり返す」という歴史の法則が、どうやらこの中国でも、すでに作動しはじめているようである。

 

※次回の更新は、12月2日(水)を予定しております。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜

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