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2016年3月30日

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澤 昭裕 (さわ・あきひろ)

国際環境経済研究所所長

1957年、大阪府生まれ。1981年一橋大学経済学部卒業後、通商産業省(現在の経済産業省)入省。東京大学先端科学技術研究センター教授等を経て現職。21世紀政策研究所研究主幹も務める。

 具体的な制度措置のイメージは、以下のとおりである。

(1) 政府は、CO2排出抑制やエネルギー安全保障の観点から、以下の措置を導入する
・化石燃料に係る外部不経済の解消措置(小売事業者へのCO2排出課税とカーボンフリー電源容量市場の創設、燃料費上昇分の小売料金転嫁の制限措置等)
・安全性向上に向けた原子力発電設備の更新促進(原子力損害賠償保険料、賠償機構負担金、規制庁の審査手数料〔新規導入〕への反映、型式に応じた定期検査間隔・検査期間の基準明確化、差異化等)
・原子力賠償体制の確認(事故時対応能力が無い者に対し、一定期間内の是正措置の運転要件化等)

(2) (1)で掲げた措置の導入に際して、個社単位ではなく「一定の要件を満たす複数事業者を同一主体と見なし」捕捉・課税等を行う仕組み(『アライアンス式申請』)を認める(ただし規制庁による実審査を除く)

(3) (1)の措置と連動して、事業者の取組を支援するべく、国は以下の支援措置を講じる((1)で賦課したCO2排出課税収入等の活用も一案)
・原子力人材の流動化を前提とした、事業者・業種横断的な技術基盤の維持(設計、オペレーション・メンテナンス、危機管理に係る高度人材の公的認証制度・セキュリティクリアランス制度の導入、技術人材の戦略的養成〔徒弟制に代わる育成拠点の整備、国内外の新規設計プロジェクト等最前線への人員派遣〕)
・「アライアンスによるコミットメント」を行う者への支援措置(例えば、設備投資・資金調達への支援〔海外とのアライアンスを行う場合のプロジェクトへの支援を含む債務保証・出資、共同新設する電源設備への包括的な担保権設定等)
・「カーボンフリー電源容量市場」への参加促進措置(稼働率リスクの補填、取引所による新設電源からの長期買取保証等)

(4) 以上の支援措置に係る全体方針の策定や、措置の担い手となる「官民共同主体」を創設し、官民の対話・すり合わせの場とする(仮称「非化石電源開発・安全推進機構」)

まずは国が事業者に政策目標を示せ

 この仕組みのポイントは、以下の4点に集約される。

●原子力を含む電源投資の意思決定は、今後とも事業者が経済性を判断して行う。原子力を単独で続けることも、複数事業者で協力することも、撤退することも「自己責任」である。

●事業者判断に委ねた上で、CO2抑制や安全性向上等の社会目標の達成のために、課税等の措置を講じ、ドライブをかける。

●これらのハードルを単独で達成することが困難な事業者をバックアップするため、複数事業者による協力の取組を支援する。

●原子力人材については、今後流動化が進むことを見越し、広く原子力産業全体を視野に、認証・クリアランスや人材養成等の機能を提供する。

 この仕組みで想定する事業者間協力のあり方は、電力会社の再編には限定されない。例えば、電源の投資・運用における長期協調を通じた「排出権抑制グループ」の組成や、販売契約(受益権)や担保資産の共有による「共同資金調達バウンダリー」の組成等も一案だ。もちろん、本格的な事業再編を否定するものではないし、段階的に再編へと進むケースもあるだろう。

 また、支援措置の直接的な担い手となる「官民共同主体」は、全国規模での需給バランスを調整する電力広域的運営推進機関等、既存機関の活用も考えられる。万が一電力各社が経営危機に陥った場合の廃炉支援等、様々な拡張性を持たせることもあり得よう。

 いずれにせよ、事業者が今なお見通せない「今後の経営環境」をクリアにすることが何よりも重要だ。まずは国が事業者に対してわかりやすい「政策目標」を明示し、事業者の自主的判断を尊重しつつ、現実的な「方向付け」をしていく仕組みが望ましい。

  
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◆Wedge2016年3月号より


 


 

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