パリ、ブリュッセルの自爆犯の足跡
さらに懸念されるのは、ギリシャでテロが準備されているのではないか、という不安だ。イタリアのメディアなどによると、先月のブリュッセルの同時テロで自爆した兄弟のうち、弟のハリド・バクラウイが昨年7月、ベルギーからイタリアに入国。ベネチアから空路アテネに向かった、という。
また昨年11月のパリ同時多発テロの生き残りで、ブリュッセルのテロ事件にも関与していたことが濃厚なサラ・アブデスラム容疑者も同8月、イタリア南部からギリシャ行きのフェリーに乗っていた可能性が高い。
しかもパリ事件の首謀者であるアブデルハミド・アバウド(死亡)も昨年、アテネのアパートに潜伏していた形跡も出ており、一連のテロ事件で主要な役割を演じた3人がギリシャでテロの準備や、トルコからギリシャに不法入国した難民からテロリストの徴募を行っていたのではないかと見られている。
ISのテロ・ネットワークはベルギーを中心にフランス、ドイツ、イタリアなど欧州全体に広がっており、難民流入の玄関であるギリシャにも工作員が潜伏していても不思議ではない。
いずれにせよシリアなどから全財産を処分して命を賭けて欧州に到達した難民らにとって、トルコ送還は容易には受け入れられまい。「始めから拒否されていれば、われわれは来なかった。なぜ当初、受け入れたのか」。欧州への憧れが強いだけに、拒まれた欧州に対する憎悪の広がりが恐い。
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