―― 英語が出来る人は転職で有利になったりするのですか。
杉田 それはいろいろと可能性が広がるとおもいます。英語ができるなら社長を任せてもいい、というような会社も実際にあります。その一方で、日本人が作成した変なプレスリリースがジョークのネタになるなど、きちんとした英語表現が問われるという場面も多くあります。
―― 将来を見据えて子どもにはどんな英語教育を施すとよいのでしょうか。
杉田 海外にいれば自然に覚えてしまうことができますが、日本にいてどうするか。勉強を始めるのは、やはり日本語で基本的な学力がついてからのほうがいいとおもいます。中学から大学までは日本でちゃんと勉強して、その後に留学するのがいいのではないでしょうか
中村 私は少し考え方がちがっていて、やはり早ければ早いほどいいと思っています。ただ英語を学ぶのと同等の時間を日本語学習にもかけることが必要です。そうでないと日本語がしっかり身につきませんし、変な日本語を話すようになったりします。もう一つは、極論すれば、英語を覚えないと生きていけないといった状況を作り出す。例えば親の赴任早々に現地校に放り込まれた子どもが必死で英語を身につけるように、そういう切迫感がないとなかなか本気で身につかない面はあります。自分も特派員の時に、「このリリースを短時間で読まないと記事が書けない、締め切りまであと10分しかない」というプレッシャーの中で鍛えられた面は大いにありました。
―― 毎日の勉強法についてはどうですか。
中村 先程もふれたように、毎日少しずつでもいいので何か、読む、聞く、しゃべる、書く、の訓練をしたほうがいいと思います。例えば私も経済紙のFinancial Times を毎日丸々全部を読むことはできないので、大事な記事を拾い読みしたり、社説を重点的に読んだりなどしています。また休日には家のテレビでCNNやBBC ワールドをつけっぱなしにして聞いていたりもします。あとは杉田さんの番組を聴くことは励行しています。
杉田 私も中学生や高校生の時にラジオで勉強しました。映像や画像があるとそれに惑わされてしまうこともありますが、ラジオのいいところは音声だけですので、集中して聞くとしっかり頭に入ってくる。「シャワーのように聞く」といった勉強法もあるようですが、それよりも10分とか15分集中して聞いた方がいいと思いますし、同じものを何度も何度も聞くことが大事でしょう。そういう意味ではラジオは録音してもいいですし、ストリーミングで聞いてもいいです。
―― 何度もというのはどれぐらいですか。
杉田 いちおう聞き取れた、ということを自分で納得できるまででしょうか。
―― 気に入った演説やスピーチなどを何度も聞く方法などはいかがでしょうか。
杉田 それは非常にいいことと思います。スティーブ・ジョブズの有名なスタンフォードの卒業式のスピーチを知っている人は多いですが、あらためて音で聞いてみる。ところどころ聞こえない、わからないところを後で活字で調べてみる。またスピーチを自分で書き出してみて、書いたものを活字で比べてみると、自分の耳がどういうところに弱いのかがわかります。このように聞いたものを書きだすディクテーションは効果があります。演説といえば、アメリカの高校生はリンカーンのGettysburg Addressを暗唱させられます。"government of the people, by the people, for the people"(人民による人民のための人民の政治)で有名なものです。
何かを達成するには犠牲を払わないといけません。大人が犠牲にするものは時間とお金です。そうしないとcomfort zone からは出られません。大人の学び直しはそのことを認識することが大事だと思います。
―― ありがとうございました。
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