中村 やはり特に難しい単語は文脈や置かれた状況の中で覚えてゆかないといけないと思います。例えば、会議が終わるとか、延期されるという意味の単語である「adjourn」という言葉がありますが、これは私も最初よくわかりませんでした。国際会議などを取材しているうちにこの言葉は何度も聞くので、自然と頭に入って覚えた言葉です。
―― 読む、聞く、話す、書くでそれぞれ勉強の方法は違いますか。
中村 それはそれぞれ訓練の仕方が違うと思います。英文を読むのは、仕事で疲れていたりする時にはなかなかおっくうですが、一日に何か一つ、英字新聞なり雑誌なりの記事を読むことを心がければよいと思います。私は、読売新聞が発行している日刊の英字新聞であるThe Japan Newsをおすすめします。英字新聞としてニュースが充実しているのはもちろんですが、英語の学習用にもいろいろと工夫がされています。短い記事でもよいので一日一本ずつでも読むとだんだん慣れてくるし、自信も出てくるとおもいます。
次に「聞く」ですが、何かしゃべっている言葉を全部を聞いて丸ごと理解しようとするのではなく、私は主語と動詞に全神経を集中して聞くことが大事だと思っています。主語と動詞をまずキャッチする。これがわかれば、何を言っているか、何がテーマなのかがだいたいわかりますので、全部が聞き取れなくても類推できます。それに知っている単語が組み合わされば、全体で言わんとしているかがわかります。また訓練としては、私自身はインターネットで米CBSの「CBS EVENING NEWS」をほぼ毎日視聴しています。この番組はかつてはウォルター・クロンカイトやダン・ラザーがアンカーを務めた伝統あるニュース番組です。米国内で放送された同じものをネットで見ることができます。字幕も出るので、聞き取れない部分を理解する助けにもなります。
「話す」ですが、これはまさに実地の訓練です。機会をみつけて臆せず話すしかありませんし、覚えた表現を実際に使ってみることが大事だと思います。グループディスカッションなども効果的です。
「書く」については、仕事のメールなどで慣れてゆくしかないと思います。ただ気づかずに変な英語を書いてしまう危険があるので、ある程度お手本をみながらそれをまねしたり、ネイティブの人に教わったり、大事なメールは適宜チェックしてもらうことも重要だと思います。
杉田 やはり書くことが一番難しいでしょう。ただちゃんと聞けないとちゃんと書けません。ですからリスニングの力をきちんとつけるのは大事です。実践ビジネス英語のテキストにも毎回書いていますが、最初はテキストを広げないでまず聞いてみる。わからない所があっても何度も繰り返し聞いているとだんだんわかってくる場合があります。もう一ついえば、日本のビジネスパーソンには語彙がたりません。教養のあるアメリカ人は語彙は8万語ぐらいあると思います。ビジネスをやるなら2万語ぐらいは必要でしょう。ある程度語彙を増やしてゆかないとついてゆけないのは確かです。
―― 社会人は何をゴールにするべきでしょうか。
中村 それは人それぞれだとおもいますが、勉強のための目標は持った方が良いとおもいます。英検1級とかTOEIC何点とか。
杉田 それが目的ではなく、自分がいまどこにいるのかをつかむベンチマークにすることです。英語力をつけたうえで自分が何をしたいのかを常に考えることが大事です。