2024年11月22日(金)

野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2016年5月20日

ドゥテルテ氏の地元の店に置いてあるドゥテルテ写真人形。犯罪者対策で、魔除けのようなものだという(著者撮影)

分裂の怖さ思い知ったアキノ大統領

 アキノ大統領が早期にロハス氏に対して立候補を諦めさせてポー氏へ一本化をさせていればと誰もが感じているかもしれないが、大統領への強い野心を持ち、2010年の選挙では自分の応援に回ってくれたロハス氏を辞退に追い込むことは難しく、アキノ大統領はもともとそうした政治工作が得意とは言えないタイプだけに、結果的に「分裂」の怖さを思い知ることになった。

 アキノ大統領は、投票日2日前にフィリピンの英字紙「Philippine Daily Inquirer」に掲載されたインタビューのなかで、いささか感情的になりながら、こんな風にドゥテルテ氏を語っている。

 「私たちが、すでに自分たちが成し遂げたことを否定しないことを願っている。神は、私たちに、自由の価値を教えてくれているが、いまそれが失われようとしている。そうならないことを願っているが」

 「彼がこの2カ月で語ったことを思い出して欲しい。ジョークと受け止める人もいる。しかし、もし、(マニラ湾に10万人の死体を浮かべるという話が)本当ならば、それは犯罪に対する解決方法とは言えないのではないか」

 「彼はフィリピンをフィックス(世直し)する、と語っているが、その根本にあるものは何も語っていない。国を直すと、キャンペーンで繰り返しているだけで、非常に巧妙に、成功裏に、うまく人々を丸めこんでいる」

 これらの言葉は、ドゥテルテ氏の当選を避けたいと思いながら、阻止できそうになくなったアキノ大統領の悲鳴であるように私には思えた。

  
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