2024年11月24日(日)

ルポ・少年院の子どもたち

2016年6月14日

 少年犯罪を学び、刑事政策に興味を持ってこの業界を目指すケースもあるかもしれませんが、教育の道を志し、教員志望の延長線上で、この仕事を選んでいることが多いでしょうね。

 もっとも我々は教員と言うよりも職人と言ったほうが合っているかもしれません。

――法務教官になられて20数年が経ちます。その間社会も大きく変わりましたが、少年犯罪の傾向にはどのような変化が見られますか?

 以前は暴走族が多く道路交通法違反や傷害等が主でしたが、現在は以前ほど多くはありません。それに荒っぽい反面、感受性はあり、大人たちが物事の道理を筋道立てて説明してあげると思ったよりも理解し、考えるきっかけになる子達も少なくありません。

 しかし、暴走族は上下関係のシステムが出来ていて、暴力団の予備軍みたいなもので、それを知らずにカッコつけたいとか、ストレスを発散したいなどの理由で入ってしまい、知らないうちに道路交通法違反だけでなく、様々な犯罪に手を染めていくことになります。

 もちろん道路交通法違反も重大な犯罪ですが、傷害が絡んだり、窃盗に関わるようになったり、深みにはまっていくケースもあります。そうすると組織からは抜けられなくなってずるずると……。

 以前はそうした子たちが数多くいましたが、近年は詐欺系の犯罪が急増しています。

 きっかけはネットを通して誘いを受けたり、居酒屋等で誘われるケースが多いようです。あとは昼間にパチンコやスロットをやっていたら、声を掛けられた、とか。勿論、交友関係も大きなきっかけとなります。

 大学生や社会人が詐欺系の犯罪に関わるようになるきっかけは、何か人間関係で上手くいかないことがあったり、会社で失敗して無断欠勤して街をぶらぶらしているときなどに魔が近づいて来ることが多いようです。

 最初は「やばい」と思うらしいんです。でも、会社に行っていないのでお金が無かったり、収入面で親につじつまを合わせなければならないというのが詐欺系に加担するパターンです。最悪、捕まっても「知らなかった」と言えばいいと思っているケースが多く、だいたいの子はそう言えば少年院には行かなくて済むと思っています。どんな役割であっても関わるだけで犯罪だということをもっと広く社会に教えていかなければいけませんね。

 また、弁償に関しても、個人的にはしなくていいと考えて、損得を考えながらやっているケースもあります。我々からみるとかなり悪質ですが、子どもらにしてみればごく軽い遊び感覚でやっていることが多いようです。そういった犯罪に関わってはいけないということを大人たちや、社会が何らかの方法で働きかけていく必要があると思います。


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