――昔の暴走族タイプと近年の特殊詐欺タイプでは、どういった点を重視して指導を行っているのですか?
暴走族タイプには感受性のある子たちが比較的多いと思います。檄を飛ばしても前向きにとらえてくれるなど心的つながりが築きやすいのですが、感受性の弱い子は不信感ばかりをつのらせてしまって、なかなか前向きには考えてくれませんし、職員との心的なつながりも築きにくいです。
そういった子たちは親や先生など、とにかく周りにいる人間たちのせいにして、「だから自分はこうなってしまったんだ」と考えて、自分の中でバランスを保っているんでしょう。ですが、本心ではこのままではいけないと思っているものです。それを聞きだすまでの関係作りに時間を掛けています。
――具体的にはどのような接し方を?
一人ひとり違うのでケースバイケースですが、質問を変えたり、態度を変えたり、様々なことを積み重ねていって相手の言葉を引き出していきます。
最初は反発から出てくる言葉もあるのですが、それに対して職員からはダメ出しはしません。「それで?」「それで?」と重ねて聞いていきます。すると相手は「あれ?」「この人には何を言ってもいいのかな?」「怒られると思ったけど、しっかり聞いてくれるんだ」と徐々に変わってきます。
これを繰り返して信頼関係を作っていくのですが、相手に「あれ?」と思わせる、この最初が勝負だと思っています。ここは絶対に失敗できません。
この最初の段階で失敗すると約5カ月という短い期間では取り戻すことができません。とにかく最初です。ここが全てと言うくらい我々は真剣に取り組んで勝負に臨んでいます。
逆に最初がスムーズにいくと、良い関係が築いていけます。元々人間関係の構築が上手くできなかった子たちなので、不信感を持ちながらも、「この大人は話を聞いてくれる」となれば、我々の話も前屈みになって聞くようになってきます。
――最初が勝負で、まずは相手を受け入れることからスタートですね。
基本はとにかく話を聞くという姿勢ですが、そうしているうちに、「きっと先生は俺のことをもっと知りたがっているんだろう」なんて、思ってくるので、今度はその期待を裏切って「じゃ今日は時間だからここまで」と言って途中でも話を打ち切ってしまうことがあります。
あえて期待を裏切ることによって、「えっ?もう終わりなの???」みたいに感じると思うのですが、「今日は話が聞けて良かったよ」と言いながら、話を終えるんです。子どもはもっと話したい、知ってもらいたいという顔をします。その「話したい」という気持ちを次に繋げて増大させていきます。