ルポ・少年院の子どもたち

2016年6月14日

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――指導に際して一番心がけていることは何ですか。

 基本的には、「個」を育てることを頭に置いています。「常に自分なりの考えを持って発言し、行動すること」と指導しています。自分の考えを持つということは自分の犯した罪に対しての反省を深いものにしていきます。過去の自分がどれだけひどい人間だったか、何も考えていなかったことを知ることにもつながります。当然、集団生活の中に生きてきますし、自分の将来設計にも繋がっていきます。ここでの生活はその準備期間のようなものです。

 また、子どもたちの挨拶の声の張り具合とか、目の輝きや目の合わせ方、ほほえみなどに気をつけながら、こちらも相手の反応を確かめながら「今日は何かいいことがあったの?」とか、「いいね、その挨拶」というように返しています。考えさせるようにメッセージをこめて、投げ掛けます。

 心に何かあれば、朝の挨拶時などに出ます。当直明けの職員から前日の様子は聞いていますが、気を付けて接しているとそれ以外にも感じるものがあります。たとえば目を合わせる時間の長さとか、逸らし方にもいろいろなサインが発せられています。

 「先生に話したいことがあるんだけどな」みたいなときは、目の合わせ方がいつもよりも長かったりしますのですぐにわかります。そういうときは、普段よりも目がキラキラしています。

 人それぞれにサインの仕方はありますが、子どもたちから出される何らかのサインを見逃さないことが大切です。サインを感じたときには必ずこちらも応えなければいけません。この種の返しが少年と指導者との距離を埋めていくと思っています。

 それには、こちらも常に彼らの成長に合わせたメッセージを発信し続けていなければなりません。

――最後に、少年たちが出院する際の不安についてお聞かせください。―

 彼らの不安は戻る環境にあります。友人関係や以前に関わりのあった悪い大人たち(組織)との関係などですが、ここでは特殊詐欺で入って来た子たちについてお話しします。彼らは社会で孤立しがちなタイプなので、悪い大人たちと繋がりのあるケースは少ない。ですが、同時に家族との繋がりも希薄ですから、戻っても家族とコミュニケーションが取れるのだろうか?という不安を持っているケースが多いです。

 最初は些細な行き違いに端を発して、少しずつずれていって、そのずれに家族も本人も気づきながらも修復できずにここに至っています。そして我々のような第三者を必要としています。

 我々は子どもと家族の間に入る人間として、最初に入って来た時点でいかに家族と我々が信頼関係を築けるか、そこに彼らの社会復帰が掛かっていると思っています。家族との関係も最初が肝心ということです。

 中には犯罪の重大さを重々理解しているはずなのに、息子に接すると茶化してしまって、しっかり家族が受け止めているとは思えないケースがあります。

 そういう時は「それは違います。いっしょに考えてください」と親に向かってしっかり伝えています。

 子どもたちにはここで約5カ月間の教育を受けてもらいますが、本当に彼らが本当の意味でやり直すのは家庭に戻ってからです。家族が、親が主役なのです。われわれはその練習台であり、調整役です。

 家族間でのコミュニケーションがきちんと取れるようになって、家庭がきちんとした機能を果たすようにならなければ真の社会復帰は難しいと思っています。

――法務教官 中村和久専門官にお聞きしました。中村教官、ありがとうございました。

*「市原学園~365日・24時間体制で臨む法務教官の役割とは(後編)」に続きます。

  
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