昨年11月に掲載した拙稿(「『憲法改正』の可能性はあるか 日本人弁護士が見たミャンマー選挙」)でも述べたが、私は現在、ミャンマーのヤンゴンにある外資系(シンガポール本拠)法律事務所で、外国法弁護士として執務をしている。本年4月からは、法務省の委託を受け、ミャンマーの法制度全般及びミャンマー進出企業・在留邦人の抱える法的問題を調査・分析し、これに対する日本法弁護士による効果的サポートのあり方を検討する業務も平行して行っている。本年8月まではヤンゴンに駐在し、その後は、東京とヤンゴンを行き来しながら調査・分析を続ける予定である。
ミャンマーでは昨年11月に総選挙が行われ、アウン・サン・スー・チー氏率いるNLDが大勝した。これによって政権交代がなされ、今年4月には新大統領が就任し、新内閣も発足した。こうしたミャンマーの政情を受け、昨年後半ころから、日本のメディアでも、頻繁にミャンマーを取り上げるようになったように感じている。ミャンマー憲法では、外国人を家族に持つ者は、大統領・副大統領になる資格を有しない。
アウン・サン・スー・チー氏は、この欠格事由により大統領に就任できなかったが、外務大臣及び大統領府大臣に就任した。さらに、与党は国家顧問という職を彼女のために設置し、国家顧問に選任して、大統領や閣僚などに助言を与える立場に就かせた。日本でも、5月始めに、外務大臣が、早速同氏との会見を行っている。2011年の民政移管以来、加熱していたミャンマー投資だが、米国も経済制裁の更なる緩和を打ち出しており、更なる投資熱の高揚が期待されるところである。
活発化する不動産投資
ミャンマーへの新規投資が盛り上がるにつれ、不動産業界も盛り上がることであろう。しかし、ミャンマーでは、これまで外国人が不動産を所有することは認められず、特別な投資許可のない限り、1年を超える賃借を受けることもできなかった。それゆえ、不動産投資を目論む外国人は、現地人の名義借りなどが必要だったが、脱法的であり、リスクやトラブルもあった。ところが、今年1月末に成立したコンドミニアム法(The Condominium Law (2016))により、この禁止が遂に一部解禁された。実質的な施行は、細かい実施規定を定める下位規則の制定を待つ必要があるが、ミャンマー不動産が、投資対象として脚光を浴びる可能性が出てきた。本稿では、不動産投資の可能性について、新法を通じて探ってみたい。