2024年6月16日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年6月27日

「要衝」を巡る帝国の駆け引き

 そもそもニカラグアに「運河の夢」を見させたのは米国である。19世紀半ば、カリフォルニアで金鉱が発見されると、この金を西海岸から東海岸に輸送するルートとして、ニカラグア運河が計画された。1849年には、英国に対抗するために米国の支援を求めるニカラグア政府が、米国政府の後援を得ていた実業家のコーネリアス・バンダービルトの会社に、運河に関する事業・運営管理権を譲渡した。

運河開通によりパナマは発展した (BLOOMBERG/GETTYIMAGES)

 この頃から、ニカラグアとパナマは、太平洋と大西洋を結ぶ輸送路として競争関係にあったのだ。ニカラグア運河の建設工事が始まる一方で、実際には、川と湖の水路と乗合馬車による陸路をつなぎ合わせた輸送路が大量の人員と物資を輸送して成功を収めた。しかし、パナマ鉄道が開通すると、このルートは衰退する。

 米国は運河建設に関して、ニカラグアとパナマを天秤(てんびん)にかけてきた。米国がこれらの国で自由に運河を建設できなかったのは、外交関係のせいだ。欧米諸国は、自国の利益のために、中南米諸国に対して強引な手段を使ってきたのである。米国によるパナマ運河建設に反対したコロンビアの影響を排除するために、米国がパナマをコロンビアから独立させたのは、その典型だろう。

 その他にも米国は、ニカラグア運河建設のために、軍艦を沿岸に派遣して威嚇したり、ニカラグアで起こった暴動に対して海兵隊を派遣し、当時の大統領を辞任させたりしている。潜在敵国であるドイツに運河建設の権利を渡そうとしたからだ。

 米国にとって、これら運河を潜在敵国に押さえられるということは、自らの動きを封じられた上に、常に喉元にナイフを突き付けられているのと同じである。中米では欧米諸国が権益と安全保障環境を巡ってしのぎを削っていたのだ。

 話をニカラグア運河に戻す。運河建設の総工費は、ニカラグアのGDPの5倍近く、500億ドル(6兆円)と莫大な金額だ。総工費はすべてをHKND(香港ニカラグア運河開発投資)が調達するとしている。HKNDは、北京に本社を置く信威通信産業集団の会長で大富豪の王靖氏が2012年に香港に設立した企業だ。通信関係の会社や大富豪の経営者が、軍や党中央と無関係だとは考えにくい。

ニカラグア運河建設の着工式に出席したHKNDの王靖CEO (AFP=JIJI)

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