2024年4月25日(木)

坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2016年7月28日

 「鴻海精密工業(ホンハイ)、シャープの従業員を3000人規模でリストラ」、「シャープはホンハイの戴正呉副総裁を社長にすると発表」など、最近新聞を開くと「こんなハズじゃなかった」とシャープの経営陣が苦虫を噛み潰したような内容の記事をよく目にする。

 これは日本企業にとって大変よい教訓だ。というのも中国・台湾企業の交渉のやり方は米国企業と大きく異なる。

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 買収交渉を例にとると、米国企業の場合、買収金額を少なく見積もっておいて、交渉の過程で金額を引き上げていき、落としどころを見付ける方法がスタンダードだ。

 5000億円での買収が落としどころだと考えていたとすると、まずは3000億円を提示して、そこから交渉を行い、最終的に5000億円付近に落ち着かせるイメージだ。

 一方、中国や台湾企業の場合、はじめに相手が喜ぶような「好条件」を提示する。5000億円で買収しようと考えていた場合、まず8000億円を提示する、といった具合だ。金額だけでなく「経営陣の首はすげ替えない」、「リストラはほとんど行わない」といった条件も付与する。

 そうして基本合意に至り、買収のライバル企業がいなくなると、「前提が変わったので買収金額を引き下げる。経営陣も替える必要がある。リストラも実施する必要がある」等と、徐々に条件を厳しくしていくのだ。

 米国企業が良い、中国企業が悪い、ということを言いたいのではなく、こうした文化なのだということをお伝えしたいのだ。私は中国や台湾の企業と何度も交渉を経験したことがあり、また、台湾の半導体メーカーの相談役を務めた経験もあるので、こうした「文化」をよく知っている。


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