――確かに、「学校の勉強なんて何の役にも立たなかった」って言う人いますね。
小川:その代わりに親なりに価値があると考えているものを伝えるのならいいんです。その価値を得るために学校の勉強も必要だと、子どもは自分で判断できるようになりますから。でも、意欲や関心を奪う一方のものは子育てではありません。
親が、自分に学歴がないことに引け目を感じる必要はありません。ただ、子どもから奪う一方の大人になってしまいそうだったら、周囲に「わからない」「教えて」って言う練習をしたほうがいいです。子育ては一人でやるものではない。自分に分からないものは、分かる人と子どもをつないであげればいい。「わからない」って言うのは勇気が要るけれど、言える大人は、勉強の楽しさを子どもに教えてあげられる人です。
子どもを子ども扱いしないこと
――小川さんご自身は、どんな風に育てられたのですか?
小川:僕は育てられ方に関しては全く不満がない。感謝しかないんですよ。一番よかったのは、かなり早いうちから子ども扱いをされなかったこと。3歳頃から僕は「大介」として扱われていて、「いいから言われたことをしなさい」とか「子どもだからまだ早い」というような言い方は父からも母からもされませんでした。小学校低学年のときにドラマのラブシーンで席を外させられたくらい(笑)。あとは、母や祖母が向田邦子の本を図書館で借りてきて「どんな本?」って聞いたら「あんたも読む?」って。
――「難しいから無理だよ」とは言われなかったんですね。
小川:ないですね。読んでみて「わからん」って言ったら「そっか早かったかあ。まぁ、もうちょっと大きなったらまた読んでみ」って。自分が仕事でいろんなお子さんのお世話をするようになって、子どもがやることを待つとか、「まだ早い」って言わないようにするというのが保護者としてすごく難しいというのは実感するようになりました。
ただ、両親に聞いたら、どういう風に育ってほしいかという話し合いは夫婦でよくしていたみたいですね。うちの父は「親として財産とか残せるものは何もないけれど、ずっと見ていてあげようっていうのだけは決めていた」と。それは僕の子育てアドバイス、学習指導のベースにもなっています。個別指導教室の講師たちにも繰り返し言っているのは、「子どもが何かしてるところを見るのは当たり前。大事なのは、何もしてないように見えるところをどれだけ見て、くみ取ってあげられるかどうか」ということですね。そのぐらい子どもをしっかり見ようと。
大人が勝手に決めて子どもに何かをさせるのではなく、ちゃんと見てあげる。子どもが何に興味を持っているのかを見たうえで、選ばせてチャンスを与えて伸ばしてあげるのが教育。それが、この本の一番伝えたかったところですね。
・子どもの「見て」には応えよう
・「わからない」には価値がある
・「まだ早い」は大人の思い込み
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