英国の経営者協会(Institute of Directors)で初めて女性代表幹事に就任したバーバラ・ジャッジ女史に日本のコーポレート・ガバナンス(企業統治)の現状と女性の社会進出について聞いた。ジャッジ氏は「日本では社外取締役制度やスチュワードシップ・コード(SSC)が突然導入され、新しい流れと古いものが衝突して企業風土に摩擦が起きている状態で、学習するまでにしばらく時間が掛かる」と指摘、新しい形のコーポレート・ガバナンスが定着するには時間が掛かるとの認識を示した。女性の社会進出では「子育て保育が最大の問題で、これを解決するには職種と滞在期限を限定した移民制度を導入すべきだ」と強調した。
独立性確保のためにはルール
ーー 2015年6月末からLixilグループの社外取締役に就任された理由は何か。
ジャッジ氏 日本のコーポレート・ガバナンスがどうなっているか知りたかったので、受けることにした。日本企業の社外取締役に女性として入るのは非常にエクサイティングなことだと思った。
ーー 東京証券取引所に上場している企業の90%以上が社外取締役を導入しているが、社外取締役の独立性をどのようにすれば確保できるのか。
ジャッジ氏 取締役には2種類ある。英米では企業の業務の執行を行う非独立取締役と社外の独立取締役がある。少なくとも日本の企業は2人以上独立した社外取締役を置くべきだ。いま、企業に要請されているのは独立した社外取締役を置くことなのだから、日本のコーポレート・ガバナンス・コードを書き換えて、独立性を確保した社外取締役が必要だというルールにすればよい。ルールで独立性を定めれば、社外取締役が独立性を確保できる。私が知っているところでは、Lixilグループもソニーも独立した社外取締役がいる。
ーー 欧米の社外取締役の割合はどうなっているか。
ジャッジ氏 米国の大手企業の場合は、取締役の大半が社外取締役で、大多数が独立した取締役だ。英国の場合は米国とはルールが違っていて、取締役の過半数は社外取締役で、その過半数は独立した社外取締役でなければならず、指名委員会には十分な数の独立した社外取締役を入れなければならないことになっている。
ーー 社外外取締役の質の向上が指摘されているが、そのためにどうすればよいと思うか。
ジャッジ氏 英国経営者協会の会長としているが、協会ではより良い社外取締役を生み出すため教育をしている。企業から送られてくる場合もあるし、個人で自ら質の高い社外取締役になろうとしてこの教育を受ける人もいる。特に取締役の経験のない新人に取ってはこの教育は大事だと思う。