2024年11月22日(金)

世界の記述

2016年8月16日

 米国の製造業は安いシェールオイル、ガスの利用により00年から回復基調にあり、従業員数は8万人増加。オバマ政権はこれを加速させるべく、アジア諸国に対抗できる「世界をリードするスマート・マニュファクチャリング」を推進してきた。

3Dプリントでは既に実績も

 卓越した技術と革新的アイデアを持つ製造ハブへの政府融資は14年に始まり、これまでSMII含め9つのハブが合計8億ドルの融資を受けた。今後も新たなハブに6億ドルを融資する計画があるという。

 過去には3Dプリンターハブがイリノイ州に作られ、ゼネラル・エレクトリック社(GE)からの融資を引き出して一大プリンターハブとなった実績などがある。このハブから派生したニューヨーク州ロチェスターの施設では、米国初となる米国食品医薬品局認可の医療用デバイスの3Dプリントも行われた。これにより企業などから合計14億ドルの投資が集まった。

 政府と学術団体が中心となって計画した製造ハブだが、民間企業からも投資が集まり、これまで1000社以上がハブに参画してきた。米政府は、例えばデトロイトのような従来型の製造ハブではなく、デジタル時代に対応したイノベーションを中心としたものづくりを推進し、その分野で米国を世界のトップにしよう、というものだ。今後もロボティクス、人工臓器など5つの分野でのコンペが予定されており、全国から優れたアイデアを募集する。

 もともとTPP合意に積極的なオバマ政権は、輸出を前提に世界と競合できる製造業を強化し、国力を回復させるのが狙いだ。ただし次の大統領候補はどちらもTPP批准には否定的。巨額の融資により行われてきた製造ハブ作りは過去の遺産となるのか、あるいは本当の意味での米国の製造業復活の基礎となるのか。答えが出るのはまだ先のこととなる。

  
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