ポピュリズムという言葉は、ロシアの農村運動に起源を持ち、エリート主義に対抗する言葉として使われ始めたという。日本では人民主義、大衆主義などと訳されていたが、要は、既成勢力、権威、富裕層が悪い、と民衆の欲求不満をあおり、勝ち上がる政治姿勢を指す。最近では欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国の国民投票をめぐり、離脱派の政治家たちが「大衆の情緒や感情をあおるポピュリズムだ」と非難された。
6月のペルー大統領選でケイコ・フジモリ氏を破ったクチンスキー氏(Getty Images)
“ポピュリズムの本場”で起きた変化
ポピュリズムの本場などというと言い過ぎかもしれないが、過去20年、大衆誘導政治が席巻した南米で最近、「ポピュリズム疲れ」が起きているという指摘がある(6月23日付フィナンシャル・タイムズ紙「ラテンアメリカ:新たな政策の下で」)。
6月のペルー大統領選で、ポピュリストの典型だったフジモリ元大統領の娘、ケイコ・フジモリ氏を小差で破ったクチンスキー元首相。さらには、2001年の財政破綻以来、左派ポピュリズム政権が続いてきたアルゼンチンで、昨年選出されたマクリ大統領。いずれもカリスマ性は低いが、経済に明るい実務派という評判だ。独裁よりスタッフとのチームワークを重んじ、大衆をあおるタイプでもない。