部長の出張は特急、ヒラ社員は各駅停車?
部長が出張するならば、特急料金を払って特急に乗ってもらいましょう。ヒラ社員の出張は、特急料金を惜しんで各駅停車で良いでしょう。その理由は、「部長は出張先で多くの取引をまとめて多大な利益を我が社にもたらすと期待されるので、特急料金を支払って少しでも長く出張先で仕事をして欲しい」一方で、「ヒラ社員は、1時間あたりの契約獲得件数が部長より少ないだろうから、特急料金を払うのは勿体ない」ということなのです。
特急に乗ることで、必要となる費用は特急料金です。一方で、特急に乗らないことで得られたはずの契約が得られなくなり、得られたはずの利益が得られなくなった金額は機会費用です。部長は機会費用が高いので、特急に乗るのです。ヒラ社員は機会費用が安いので各駅停車で良いのです。
ここで間違えてはいけないのは、「部長の年収を1時間当たりに直すと特急料金より高いから」という計算をしてはいけない、ということです。あくまでも部長の方がヒラ社員よりも1時間当たりの契約獲得数が多いから、という話なのです。
日本企業は年功序列ですから、部長がヒラ社員より能力や熱意があるとは限りません。場合によっては部長よりヒラ社員の方が契約獲得の可能性が高いかも知れません。その場合には、部長を各駅停車に乗せて、ヒラ社員を特急に乗せるのが、経済学的には合理的だ、ということになるわけです。
もちろん、経済学と離れて社内政治を考えれば、「部長は偉いから特急のグリーン車」という選択はあり得るのでしょうが、それは経済学とは無関係の話なので、本稿ではコメントしないことにしましょう。