2024年4月26日(金)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年7月27日

「壁」対「橋」

 クリントン候補と副大統領候補に起用されたティム・ケイン上院議員(バージニア州)は、即座にトランプ候補の指名受諾演説に反応しました。

 第1に、クリントン候補は、トランプ候補が放った「私は自分1人で問題解決できる」というメッセージを取り挙げました。「一緒になればもっと強くなれる」というスローガンを掲げているクリントン候補は、米国社会が直面している諸問題を個人で解決するのではなく、協力し合ってチームで解決する立場をとっています。クリントン候補が集団主義的なアプローチに重点を置いているのに対して、トランプ候補はカーボーイのジョン・ウェインのように個人で問題解決を図ろうとしている点が対照的です。

 第2に、クリントン候補はトランプ候補が力を込めて語った「私はあなたの声になる」について批判したのです。クリントン候補は、ある集会でトランプ候補が「あなたのことを語っていると思いますか」と支持者に質問を投げかけました。クリントン候補は、女性蔑視や反移民の発言を繰り返すトランプ候補が「あなたのことを気遣っていると思いますか」という意味を込めて支持者に尋ねたのです。

 第3に、ティム・ケイン上院議員(バージニア州)は、同じ集会でユーモアを込めながら、若者に向かって以下の3つの効果的な質問を投げかけました。

 ・「『お前はクビだ』と言う大統領がいいですか、それとも『あなたを雇います』と言う大統領がいいですか」

 ・「障害者や女性、メキシコ系、同盟国をこけおろす大統領を欲しますか、それとも人と人の間に橋を架ける大統領を欲しますか」

 ・「自分第1主義の大統領がいいですか、それとも子供・家族第1主義の大統領がいいですか」

 言うまでもなく、前者がトランプ候補で、後者がクリントン候補です。要するに、クリントン候補とケイン上院議員は、「トランプ候補は、あなたの声に耳を傾け、意見を代弁し、気遣う大統領には決してなりません。自分第1主義の大統領になるのです。私たちは協力し合って米国社会が抱えている問題を一緒に解決していきましょう」というメッセージを発信したのです。

 7月25日から東部ペンシルべニア州フィラデルフィアで、民主党全国大会が開催されました。民主党は、トランプ候補を人と人の間に「壁」を作る大統領として、一方、クリントン候補を移民、同性愛者、障害者、女性及び家族や子供を気遣い、人と人の間に「橋」を架ける大統領として描いています。

  
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