2023年2月4日(土)

WEDGE REPORT

2016年8月13日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

リンカーンセンター内、デビッド・コッチ・シアター(筆者撮影)

不思議な感動をおぼえた「シカゴ」

 普段は4階まであるコッチ・シアターは最上階が閉めてあったが、全体のお客の入りは8割程度だった。一階席の最前列2列は日本から来たらしいファンたちで占められているけれど、全体的に日本人らしい姿は2割程度と思ったより少ない。

 さて宝塚の「シカゴ」は、一生懸命舞台稽古を積み重ねてきた、という舞台だった。女囚人らしい不敵さ、歩き方や身のこなしにも肩の力の抜けたジャズっぽい味が足りない。ボーカルの聞かせどころで時々声が割れたり、後半の「Takarazuka Encore」では、マンボもタンゴもラテン風味に欠けていてあせった。

 ところが、気がつくとじんわりと感動している自分がいた。

 まずビリー・フリンを演じた峰さを理をはじめとするベテランOGたちは、往年の大スターらしい輝きに満ちていた。コッチシアターの大きな舞台の中央に立っても堂々として、主役を張るに相応しい風格があった。

 また得をした気分にさせてくれたのは、メリー・サンシャインを演じた岡本知高である。唯一男性の特別ゲストだったが、その声量も声の質も圧巻で観客席を沸かせてくれた。

 何より精一杯観客を楽しませようという宝塚スピリットが、舞台全体を通して感じられた。世界のどこよりも厳しいニューヨークという街でよくやった、よくやったと最後は涙ぐみそうにすらなった。感動を呼ぶ舞台とは、必ずしも技術が全てではないと教えてくれた、貴重な体験だった。


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