プロ野球界にはやはり、故・根本陸夫氏のようにその筋に睨みの利く強面の人物が必要なのか。今季、暴力団がらみの問題が表面化するたびに、そんな思いが脳裏をよぎる。
覚醒剤取締法違反による清原和博元選手の逮捕、笠原将生、福田聡志、松本竜也、高木京介・元巨人投手らがNPBに失格処分(高木のみ1年、ほかの3人は無期。笠原のみ賭博開帳図利幇助容疑で逮捕)を受けた野球賭博問題が波紋を広げている中、NPBが労組選手会と連係して〝危険人物〟の締め出しに乗り出した。NPBは6月下旬、元暴力団関係者A氏の顔写真、住所、携帯電話の番号、かつての所属組織などを記した手配書を12球団に配布。この人物が選手に接触を図ってきたらただちに通報するよう呼びかけている。
私がこの情報を東京スポーツ(7月10日付)の連載コラム〈赤ペン!!〉で報じると、しばらくして夕刊フジ(7月23日付最終面)が問題のA氏がプロ野球OB解説者・橋本清氏と親交があり、選手会が橋本氏との接触を避けるよう全選手に通達していると伝えた。続いて週刊文春(8月4日号)に掲載されたA氏への直撃インタビューによると、A氏は巨人選手と食事をしたことは認めたものの、橋本氏と懇意にしているわけではなく、野球賭博にも関与していない、と主張。A氏との関係や野球賭博に関しては、橋本氏もフジ、文春の取材に対してはっきり否定している。
根本陸夫氏ならどうするか?
さて、こういう場合、根本陸夫氏ならどのように対処するだろう、と思うのだ。
オールドファンならご存じの通り、根本氏はかつて西武(1978~92年)、ダイエー(現ソフトバンク、93~99年死去)で、監督や管理部長として辣腕を振るった人物である。ドラフトの網の目をかいくぐる数々の〝裏技〟で有望な新人を獲得し、両球団を常勝チームにする土台を築き上げ、〝球界の寝業師〟と異名を取った。もともとは法政大学から近鉄パールス(現オリックス・バファローズ)で捕手をしていた元選手で、法大時代に安藤組組長・安藤昇と昵懇の間柄だったことはよく知られている。そうした人脈から、選手に近づいてくる暴力団関係者の手口には精通しており、西武では新人が入ってくるたびにドスの効いた声でこう言い聞かせていた。
「知らねえ人間がうまいこと言って近寄ってきても、絶対にごっちゃんになるな」