結果は、Bさんには、週2回程度の勤務で、月40万円プラス成功報酬といった条件でのオファーがありました。一方、米国公認会計士の資格を保有するAさんは残念ながら週2回の希望では、採用には至りませんでした。
なぜでしょう? 一言で結論から申し上げると、経験が重視された、ということです。米国公認会計士という資格よりも、経理の実務経験、その他の経験を積んでいることが、貢献につながる即戦力、プラス「想定以上に貢献してくれる可能性も」という期待感につながったのです。
実際に、Bさんは簿記こそ2級レベルだったものの、前職の税理士事務所では必要に駆られてクライアントへの営業、その後クライアントからの要望により当時未経験ながらコンサルティングまでこなす女性でした。
え? スキルは関係ないの?
経験が重視された、というと、「え? スキルは関係ないの?」と、思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。「経験が重視される」ということは、スキルに置き換えると、ハードスキルではなく、ソフトスキルが重視された、ということです。
両者の区別が難しいスキルも一部ありますが、一般的には、ハードスキルとは、体系化・形式化され、可視化できるスキルのことを指し、殆どが「社外で学べるor学ぶべき」ものです。簿記や語学、マーケティング、ほか、業務に不可欠な専門知識等がハードスキルにあたります。
これに対して、ソフトスキルは非定形的で可視化が難しいスキルを指し、たとえば、ファシリテーション力、コミュニケーション力などがこれにあたり、ほとんどが社外で学んでもなかなか身につけることが難しく、社内で経験により磨けるスキルを指します。
「わざわざスクール等に通ってまで学んで習得してきたスキルなのに評価されないのはおかしい」と、考える方もいるかもしれません。なぜソフトスキルの方がハードスキルより重視されたのでしょう? 個人のスキルを「活用する側」、つまり企業側の視点で、逆算して考えてみましょう。
会社にとって個人に一番期待したいことは、期日までに限られたリソースを使って「目標を達成すること」もしくは「期待している以上の結果を出してくれること」です。では、その個人が「目標を達成する」にはどんなスキル、能力が必要でしょうか?
「目標を達成するために、その過程にある様々なトラブルを乗り越え、時に上司や同僚や他社の人などに相談する等で人を巻き込みつつも、情報収集し、自ら考え、工夫して実行し、強い意思を持って継続して努力できること」
といった複数のスキルや工夫が求められます。