2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2009年12月20日

 地方分権論議をする前に、国の果たすべき役割について、国際的視野をもって、かつ、経済の発想をとりいれた議論を抜かりなく行う必要がある。こうした大きな問題は内閣で扱うのに適しており、国家的見地から関連省庁を巻き込んで戦略的に進められなければならない。「国と地方の役割分担を徹底して見直す」のはいいが、見直しの前提としての「国のあるべき姿」がはっきりしないままに国の権限を引きはがすだけでは、「分権進んで、国滅ぶ」ということになりかねない。

 従来の分権改革がほぼ完全に国主導の「上からの改革」であって、地方の発意によるものでなかったことは歴史的な事実である。

 一見、国と地方が対立しているように見えるが、実のところ地方は脇役にすぎず、分権改革の実質が旧自治省(現総務省)をコアとする中央省庁間の権限争いという面が濃厚であったことは改めて確認しておくべきであろう。

 11月に出された第4次勧告では「地方交付税の総額の確保及び法定率の引上げ」が言われ、財務省が強く反発しているが、これは限られた財源をめぐる総務省と財務省の争いそのものである。

 しかし、真の意味における地方固有の財源は地方税に他ならず、自治体間の財政調整のための地方交付税は二次的な仕組みにとどまることからすれば、「地方交付税は地方の財源であるから増額せよ」という総務省サイドの主張の本質は、少々むき出しという他ない。

 総務省は、他省庁に対しては地方分権を唱えながら、地方に対しては自己の所掌事務の範囲内で国としてこれを統制するという、アンビバレントな存在である。

 地方を支配するツールは主として2つあり、自治行政局は地方自治法等を通じた法令統制、自治財政局は地方交付税等を通じた財政統制を行っている。

政治主導で分権改革の再スタートを

 新政権のもとで従来の地方分権論議をいったんリセットするというのであれば、政治主導で、従来の分権改革のこうした「いやらしさ」を払拭し、省庁間の対立を乗り越えた改革となし得るかどうかがその真価を決定づけるというべきであろう。どうせやるなら、特定の役所が得するようなまやかしの改革ではなく、真に国民にとって利益となる分権改革を行ってほしいと切に願うものである。

 最後に、憲法上、地方自治の担い手として想定されているのは住民のコミュニティとしての市町村であり、広域的な地方公共団体としての都道府県ではない。分権改革は市町村を基礎的単位として進められるべきものであり、だからこそ都道府県を廃止して道州制を導入するという議論が成り立っている。

 最近、全国知事会や一部の知事が分権論議を盛り上げている観があるが、違和感を禁じ得ない。とくに東京都のあり方は、首都の位置づけという国の問題とも絡み、23区の合併問題や都区関係の再整理なども含め、他の自治体とは異なる独自の論点がある。今後は、東京問題もまた、正面から論議の対象としてもらいたい。

関連記事 : 地方分権って簡単に言うな(2) 地方は分権を受け止められるか

◆「WEDGE」2010年1月号

 

 
 

 

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