足立倫行のプレミアムエッセイ

2016年8月10日

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 現代人の祖先が20万年前のアフリカ人女性とする「イブ仮説」は、アフリカ人がもっとも遺伝的変異に富み(他地域の異変は少なく)、突然変異の速度からすれば、現世人類の起源は約20万年前に遡る、というもの。

 だが、中橋孝博『倭人への道 人骨の謎を追って』(2015年)によれば、中東や欧州において、原人のネアンデルタール人と新人のクロマニョン人は何万年もの間共存していた。

 2010年には、ネアンデルタール人の遺伝子が各地の現代人にも引き継がれていると実証された(つまり、混血があった)。

 中国では以前から、北京原人と新人との間で人骨の形態変化(シャベル状切歯、顔面と鼻根の平坦性、前向きの頬骨外側面など)の連続性が指摘されてきた。

 そもそも、数万年前に拡散した新人が世界を征覇したなら、世界各地の石器はその時期に一大変革を遂げたはずだが、石器の変化は地域ごとに連続的で、断絶は見られない。

もう一度見直されるべき多地域進化説

 ということは、約200万年以降アフリカから何波にもわたり世界に散った原人・旧人が各地で混血や断絶を繰り返しながら新人へと変化した、という(すでに放棄された)多地域進化説がもう一度見直されるべきだろう。

 日本では、2000年に発覚した前期旧石器発掘捏造事件以後、3〜4万年より前のことはすべて白紙に戻されてしまった。

 しかし事件後も、岩手県金取遺跡(7〜9万年前)や島根県砂原遺跡(11〜12万年前)から中期旧石器時代に遡る石器が出土している(人骨が伴わないのは非常に残念)。

 日本人のルーツ探しは、3〜4万年前の前期旧石器時代の壁を乗り越え、その先へと進めてほしいと思うのである。
 

  
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