日本人は、いつどこから来たのか?
約3万年前に台湾から渡来した沖縄ルートを検証するため、7月17日に国立科学博物館チームによる航海再現実験が行われた。
草舟による人力の航行で、まず与那国島・西表島間の約75キロに挑んだのだが、強い潮流で北に流され、安全のため漕ぎ手が伴走船に移動。翌18日に航海断念が発表された。
残念だが、次回の試みに期待したい。
直毛と天然パーマ
ところで私は、今回のプロジェクトを率いた科博の海部陽介氏(人類史研究グループ長)の名前には聞き覚えがあった。
昨年12月、沖縄県で発掘相次ぐ旧石器時代の人骨を取材すべく、那覇市の沖縄県立博物館・美術館を訪ねた時のことである。
博物館の港川人の人骨展示コーナーに、肉付けし復元した港川人の模型が2体あった。どちらも裸体で、ボサボサ髪の髭面だが、一方の頭髪は直毛なのにもう一方は天然パーマ。天然パーマの方がやや外国人っぽい。
1970年に民間人の大山盛保によって沖縄県南部の具志頭村(現、八重瀬町)の港川採石場で発見された人骨=港川人は、一緒の地層の木炭の年代測定により約2万年前のものとされ、日本を代表する旧石器時代人だ(沖縄の石灰岩土壌はアルカリ性で人骨が残りやすいが、九州以北は骨の溶ける酸性土壌なので、旧石器時代遺跡が1万カ所以上あるのにもかかわらず、人骨は約1万7000年前の静岡県の浜北人の1例のみ。しかも断片であり、港川人のような全身骨格ではない)。
2体の復元模型のうち、直毛の方は2007年に博物館が製作したもので、本土の縄文人系である。天然パーマは、下顎骨の特徴から港川人をオーストラリア・アボリジニ集団と近縁と見る科博の海部陽介氏らの説を採用した、2014年版の港川人だ。
つまり最新の学説では、港川人はアジア南方起源と見なされているわけである(航海実験は、その証明の一環でもある)。