世界の記述

2016年8月28日

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 だが強権的手法での政敵パージは安定性を損ねる危険性を秘める。まず懸念されるのが軍人・警官・裁判官・公務員などの大量拘束・解雇による行政能力の低下と地下抵抗組織の発生だ。イラク戦争後の同国は一党独裁のバース党党員と軍人を公職から追放したことで行政能力が低下。反政府組織も誕生し、混乱を収められずにいる。

変化する対外関係

 次に気になるのが米国・EU諸国との関係の悪化だ。トルコは北大西洋条約機構(NATO)の一員で、南部軍事基地を米国や英国など、ISを空爆している有志連合の前線基地として提供している。

 さらにシリアから欧州を目指す難民の通過国である。それゆえ、米欧は強い姿勢に出られないと読んでいる。

 だがペンシルバニア州在住のギュレン氏の身柄引き渡しを求めるトルコ政府とオバマ政権の関係は早くもぎくしゃくしている。EUもエルドアン大統領の死刑制度復活を示唆する発言に強く反発している。

 米欧との関係悪化は海外からの資金流入にマイナスの影響を与える。概ね好調なトルコ経済の弱点は慢性的な経常収支の赤字である。それを補てんしてきたのが海外からの直接投資や株式などへのポートフォリオ投資だ。日本企業もトヨタ自動車、ブリヂストン、日清食品、味の素、武田薬品工業など100社超が過去5年で投資している。しかし、マネーはリスクを極端に嫌う。強権手法で反対派をねじ伏せたリスクが、いずれエルドアン政権に跳ね返ってこないことを願いたい。

  
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