急速な拡大で“スパイ疑惑”まで浮上
さらにその後、アップルの自動運転プログラムとして知られる「プロジェクト・タイタン」の中心人物、とされていたバート・ナブル氏がファラデーへの移籍を発表した。同氏はコンピューター・ビジョン、ナビゲーション、AIなど自動運転の心臓部とも言える部門の研究者だった。
このように大企業の技術者が次々と引き抜かれる現状に対し、米国では「中国への技術流出」とともに、スパイ疑惑まで飛び出している。
ファラデーが北ラスベガス市に工場建設を始めることに対し、空軍司令官が「国家安全の危機ではないか」と語っていたことが明らかになった。北ラスベガスにはネリス空軍基地がある。同司令官は「LeEcoと中国政府の間には密接な関係があるのではないか」「北ラスベガスに工場を建設したのは防衛省の通信などを傍受する目的があるのではないか」などの懸念を表明していた。
ただしネバダ州政府は「ファラデーの工場建設は防衛省からの許可を得ている」とし、スパイ行為などの問題はない、と強調する。ファラデーの工場建設によりネバダ州には数多くの雇用が生まれる。その経済的側面からネバダ州内にはファラデーへの歓迎ムードがあり、「LeEcoと中国政府は無関係」という声明を発表した。
北ラスベガスは工場誘致に積極的で、イーロン・マスク氏が提唱した高速の乗り物、ハイパーループ・ワンも同市にテストトラックを建設している。何より空軍基地は全米いたるところにあり、ネリスだけがスパイ行為の対象になる、というのは考えにくい。しかしこうした懸念が浮上するほど、中国企業がバックアップするファラデーの急激な拡大ぶりが注目されている、ということかもしれない。
自動運転はAIの他GPSシステムによる詳細な地上のマッピングなど、国家安全に関わる技術も多用する。それを自社技術ではなくヘッドハンティングによる寄せ集めで行う企業体質に、米国が警戒心を抱き始めているのは確かなようだ。
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